1. 【ピークハント】光岳(てかりだけ)

投稿日時: 2021/09/18 hasimoto

南アルプス 光岳  (個人山行)

-南アルプス最南端2500m峰に登る-

山域山名:南アルプス 光岳

期日:2021年9月14日から15日

参加者:橋本義彦

行動記録

13日 熊谷17:30=関越道・上信越道・中央道=飯田IC=芝沢ゲートP23:00 前夜泊

14日 芝沢ゲートP5:30-易老渡6:30-易老岳11:00-光岳小屋14:00 光岳小屋泊

15日 光岳小屋6:45-光岳往復-光岳小屋7:30-イザルヶ岳往復-易老岳9:25-易老渡12:10/50-芝沢ゲートP13:50=中央道・園央道・関越道=熊谷22:00

 13日は松川ICから下りて、中央構造線がある東側の谷に入ってしばらく走り、遠山川沿いの林道を遡り、やっと芝沢ゲート手前の駐車場に着く。車は10台ほど止まっている。すぐに車中で休む。

 

 

 

 

上:ギンリョウソウが白くて目立つ 下:倒木が多いが登山道の倒木は片付けられている

 

14日<天気曇り>天気予報では晴れだが、明るんだ空は曇っている。朝食後すぐに出発する。易老渡までは、崖崩れのためゲートが閉められ歩くことになっている。遠山川の清流が大岩を越え、瀬音を立てている。左右の山は切り立ち、深い谷で、山は鬱蒼とした樹林に被われている。マタタビ、サルナシも生えている。1時間で易老渡に着く。施設らしき建物はない。鉄製の狭い橋を渡り、急傾斜の尾根に取り付く。易老岳まで1474mの登りだ。急登で道は右左に曲がる。登山口からはヒノキの植林で手入れされている。さらに高度を上げると広葉樹林となる。幾分明るい。落葉の中に白いギンリョウソウが生えている。形はシュンランの花にも似ている。丸い尾根筋で大岩もなく斜度はきついが登り易い。1460mの面平まで登ると、やや平坦になり、広葉樹林はサワラの大木の森となる。直径1m高さ30mほどの大木が真っすぐに立ち並ぶ。立派な森だ。ここからは、針葉樹林帯となる。汗をひどくかく。登山者はいない。ひたすら登る。ツガやシラビソの森、そこかしこの太い倒木、そしてその上の苔、それらが合わさった森の香りを吸いながら登る。木々は倒れまいと地面に根を周りじゅうに張っている。エゾシオガマの白い花が咲いている。イワカガミは葉っぱのみ。シダもたくさん生えている。易老岳まで260分のコースタイムを疑ったが、結局それだけの時間がかかり、易老岳に着く。森林限界近い標高だが、常緑針葉樹に被われた山頂だ。一休みして方向を南西に変え稜線を光岳に向かう。

 

 

上:花は少ないがトリカブトは目立つ 下:センジュ原ー光岳小屋が近い

 さすがに主稜線で、明るくなり、所々眺望も効く。草原があったり、枯れ木があったり、樹木も変化に富む。進むと西側に三吉ガレがあり、数百m崖崩れになっている。岩は奥秩父と同じ堆積岩だ。高い樹木が無く、苔が増え、イネ科の草と一緒に林床をびっしりと覆い、しっとりした高山の雰囲気だ。すでに初秋の雰囲気で気の早いナナカマドが色づき始めている。ゴゼンタチバナの赤い実がかわいい。易老岳から標高差100mほどを下り今度は登りだ。ザックが重く、脚への負担も大きかったのかその付近で脚がつった。薬を飲むとすぐに治る。登りの道は沢状の場所になり、そこには水は無く数十㎝の大岩で埋められている。途中トリカブトの鮮やかな紫の花が咲いている。曇りだが、霧雨が漂うようになってきた。GPSで光岳に近づいたことを確認する。沢状の道を登り詰めた源頭部が静高平で、清水が豊かに流れている。ここで水をパックと胃袋に補給する。ほぼ予定どおりに小屋に着ける。灌木になった湿原をゆったり歩き、光岳小屋を見つけ安心する。湿原の周りはハイマツが生えている。日本最南端のハイマツ自生地という。小屋は開放されており、小屋泊りできることになった。とても立派な小屋でコロナの影響で営業はしていないが、無料で開放しているのでありがたい。テントを張る手間も省け助かった。先客は1人のみ。少し会話する。甲斐駒ケ岳から稜線を1週間かけて歩いてきたという。少し休んで早めの夕食とし、休む。雨音がするほど強い雨が降ってきた。天気予報では、明日は晴れるという。それに期待してシュラフに入る。

 

 

 

上1枚目:富士山が姿を現す 上2枚目:南アルプス南部の聖岳などの稜線 上3枚目:光岳山頂 下:樹木が多く、木の根も芸術的だ

15日<天気晴れ時々曇り>太陽の強い光で目を覚ます。予報どおりだ。朝食後、パッキングしてから、小屋の南にある、光岳を往復する。東側の見晴らしのよい場所から、雲海のある山脈を楽しむ。光岳山頂は、余り高くない常緑樹林に囲まれ眺望はないが、落ち着いた山頂だ。小屋に戻り、湿原の横からイザルヶ岳に登ると直ぐに山頂に着く。山頂付近はハイマツ他植物が無く裸地で砂利地だ。そのため、景色は抜群、雲海があるが、四方の山々が見える。富士山、南アルプスの稜線、北アルプス、中央アルプス、白山、御嶽山・・・。

山の自然学を提唱する小泉武栄氏は「山の自然を知るには疑問を持つこと」と著書で記している。この山頂に木々や草が生えないのはなぜか。ほぼ同じ高さの光岳には樹木が茂っているのはなぜか。イザルヶ岳に植物が生えないのは砂礫の平らな稜線で雪は強風で飛ばされ種子が発芽しても成長できないのではないかと考えた。

景色を独り占めして楽しんだ後、下る。付近の丈の低いダケカンバの盆栽のような枝ぶりはすごい。湿原はどうしてできたのか。平坦なのに、ガンコウランや地衣類が優勢なのはなぜか。疑問は尽きない。

 帰り路は、登りの時とは、見える景色も異なり、こんな場所を通ったかと思う時もある。地図など見ながら方向確認をしながら下る。易老岳からは、今度は、一気に易老渡まで、ひたすら下る。樹木を見ながら、森林浴をしながら下るのもよいものだ。ただ、一人であり、登山者が少ないので、もし、滑落したら、助けを求めることはできない。滑落、転倒、怪我をしないこと、するくらいないゆっくり着実に歩くこと、そのことを思いつつ下る。面平の大木サワラの森にはやはり木の精のようなものを感じる。地形が平坦で土壌も深く、雨も多く、成長しやすい場所なのだと思う。休む気もせず、ひたすら下る。易老渡に近づいた最後の30分位は膝が鈍くなり、石に足を引っかけたり、木の根で滑ったりしながらやっと易老渡の橋を渡ることができた。ここで昼食にする。道路脇の日陰に枯れ枝があり、なんと椎茸が1個生えていた。椎茸を裂いてカップ麺に入れ椎茸入りシーフードカップ麺にして食べた。駐車場までゆっくり歩き、光岳山行を終えた。