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2005年2月、訳あってまとまった時間が取れたため、念願であったカナダでのキャットスキーに行ってきましたので報告させていただきます。
キャットスキーとはキャットと呼ばれる雪上車を使って山を登り、滑り降りるスタイルのスキーのことである。ヘリコプターを使うヘリスキーは有名であるが、移動手段が多少異なるだけで基本的には似たような物である。スキーの本場カナダでは、カナディアンロッキーを中心にヘリスキー・キャットスキーが盛んに行われている。
1月31日、新調したファットスキーを持って成田を出発した。事前の情報では今年のカナダは暖冬だそうだ。大丈夫だろうか、心配である。バンクーバーで乗り継ぎ、カルガリー空港に到着したのは同日の午後であった。今回、キャットスキーの手配をしていただいたプライムツアーの林さんが出迎えてくれていた。ロッキー山脈の東に位置する内陸部の都市カルガリーはかなり寒いところであるが、雪は全く無かった。彼の運転でロッキー山脈の町ゴールデンへ移動する。約3時間のドライブであったが、途中雨が降ってきた。林さんの話では1月後半になって急に気温が上がり、カナダ西部は大雨に見舞われたとの事。1月にこの地域で雨が降るのはかなり異常なことだそうである。お陰で雪はすっかり融けてしまい、海に近いウィスラーに至っては地面が出て閉鎖中らしい。私は実に最悪のタイミングで来てしまったらしい。
ゴールデンは町と言うよりはハイウェイ沿いにできた集落というべきものであった。ここのモーテルに着いたときにはすっかり暗くなっていた。この町から程近いところにキッキングホースという新しいスキー場がある。私は一度来たことがあるのだが、かなりの急斜面が揃った、ハードなスキー場である。パウダーの雪質にも定評がある。キャットスキーの足慣らしに、ここで3日間スキーをする予定であったが、この天候ではすっかり当てが外れてしまったようである。翌日スキー場に行くと、さすがにロッキー山脈の真ん中にあるこのスキー場では「雪が無い」ということはなかった。ただし、雪質は上の方はガリガリ下の方はグサグサという状態であったが。しかし3日目からはようやく新雪も降り、それなりに楽しむことは出来た。何よりこのスキー場の超急斜面は、日本ではまず経験できない物である。氷河地形のスキー場は、下がなだらかで上に行くほど急になる。稜線から落ちるガリー状の斜面は40〜45度位はありそうであった。ここでジャンプターンの練習を繰り返した。
カナダ到着から5日目に、いよいよキャットスキーのための移動となった。今回参加したチャタークリークのキャットスキーはちょっと変わっており、ゴールデンの町からヘリコプターで100kmほど山奥へ入った所にあるロッジに滞在して行う。簡単な説明の後、ヘリに乗り込み出発した。天候は曇り。低く垂れ込めた雲の下を、ヘリは這うように進んでいった。ところがなんと、視界不良のため元のヘリポートへ戻ってきてしまったのである。とことんついていない。その日は町のモーテルへ戻り、翌朝再びヘリポートへ。この日は天候が回復し視界良好の中、ヘリは白い山々を越えて行った。30分ほどで山間に唐突に現れたロッジの前に降り立った。ロッジは大きなログハウスの建物で、スプルースという針葉樹の生えた谷底に建っていた。ここに泊まりながら、パウダー三昧の四日間を過ごすのだと考えるとワクワクしてくる。
初日はまずロッジの前でビーコンの練習を行い、それからキャットに乗り込んで出発した。このロッジはキャットを3台所有しており、それぞれにゲストが12名とガイドが3名(内1名はキャットの運転)が乗り込む。ロッジの周辺にはあらかじめ道がつけてあり、それを使ってキャットは山に上がっていく。20〜30分ほど登ると森林限界を超えてロッキーの大斜面が現れた。天気は無風快晴である。キャットはそこからさらに上へと登っていき、稜線へと出たところで止まった。キャットを降りるとそこからは素晴らしい景色が広がっていた。鋭い岩峰とそれを取り巻くように広がる滑らかなスロープが見渡す限り続いている。そこにはまだ生きている氷河が横たわっている。ガイドを先頭に、広い中斜面へ滑り込む。雪の状態はドライなパウダー。ストックを強く突くと、3分の1位で止まるが、カツンと当たる感覚ではなく、深くなるにつれ徐々に締まってく様な感じである。新調したセンター98mmのファットスキーはその軽い雪の上で存分の浮力を発揮し、飛ぶように滑っていった。スキーが走りすぎて、気を抜くと上体が置いていかれそうである。ショートターンからミドルターンへ思い通りの弧を描き、そしてこの上下に浮き沈みする独特の浮遊感、これがたまらない。パウダー中毒患者の脳内ではドーパミンとエンドルフィンが出まくりである。他のゲストたちも結構上手い。パウダー慣れしているという感じで、そつが無い。標高差約500メートルはあっという間に滑り終わり、キャットが降りてくるのを待った。心配していた雪質は上々で、大満足である。
この様にキャットで上に登っては滑り降りるという事を、3時過ぎまでひたすら繰り返した。一回の滑りは標高差で400〜600メートルくらい。オープンスロープはあまり急ではなく15〜25度の傾斜だが、林間に入ると結構急なところもあり30〜40度くらいは所によりあった。雪崩を警戒してのことと思われる。基本的に先頭と最後尾をガイドが滑り、その間をゲストたちが適当な順番で滑る。私が乗ったキャットのゲストはアメリカ人とカナダ人、それとイギリス人で夫婦連れが多い。3組もカップルがいた。年齢は30後半から50代という感じで、私が最若年であった。皆ジェントルマンで滑る順番を譲り合い、ひとり日本人の私にも気を使ってくれていた。山屋という感じの人は少なく、アッパーミドル階層のスキー好きという印象である。日本ではめったに見かけない、アバラングや、ABS(アバランチエアバッグ)を持っている人も少なくなかった。
ロッジは太いスプルースの丸太で組み上げられた巨大なログハウスである。基本的に二人部屋で、私はアメリカ人の中年男性と同室になった。ヒゲ面の人の良さそうなおじさんである。食事は広い食堂にゲストが全員集まり一斉に摂る。肉、サーモン等、毎日メニューが変わっていく。ここでの会話が、自分の英語力の問題から苦労した。食事が終わると自由時間。バーで酒を飲む人、ジャグジーに入る人(外にあるので寒い!)など様々である。消灯は9時と早い。ヘリコプターに乗る際もらった耳栓がここでも役に立った。
二日目、三日目、そして最終日と晴天が続き、キャットは連日山の稜線へと上がっていった。そこから広いオープンバーンをひたすら滑る、キャットに乗る、滑る、を繰り返していった。山スキーと違って登る必要が無いため、いくら滑っても疲れを感じることはなかった。晴天が続いたわりには雪が腐ることなく、良いコンディションを保ち続けていた点はさすがカナディアンロッキーである。運悪く荒天が続くと林間しか滑れないらしいので、非常にラッキーであった。林間も雪質が良くそれなりに楽しいのだが、せっかくここまで来たのだから無木立の大斜面を滑りたいのは当然である。ロッジの周辺はスプルースの密林だが、キャットで30分も上がるとスキーに適した斜面が無尽蔵に広がっている。
楽しくエキサイティングな雪の楽園での4日間はあっという間に経過し、最終日となった。荷物をまとめて帰りのヘリに乗り込む。くじ引きで運転席の横に座る事が出来たので、迫力の山並みを堪能する事ができた。真っ白な斜面にはいたる所にクネクネとしたシュプールが刻まれていた。ヘリポートで待っていてくれた林さんの車でカルガリーへと行き、その日はカルガリー市内のホテルへ宿泊。翌日、飛行機で日本へと戻った。
この年、北米は過去最悪の雪不足に見舞われ、多くのヘリスキーやキャットスキーが悲惨な状況であったようであ。しかし、カナディアンロッキーの奥にあるチャタークリークは別世界で、ドライパウダーを満喫する事ができた。私のようなパウダー中毒患者にとって、まことに夢のようなひと時であった。お金と時間ができたらぜひ再度、行きたいと思うが、なかなか難しそうである…
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