山スキー記録    熊谷トレッキング同人

ニュージーランド旅行記
浅見 政人


期日 2005年 8月10日〜19日

 今回のNZ行きは用意周到に計画したものではなく、突然行きたくなって出発したものだった。2002年にインド・チャンドラタールのトレッキングで海外の山への憧れはさらにふくらみ、また、どこかに行きたいという気持ちが強くなっていた。春ごろに埼玉労山のモンブラン登頂の募集があり、参加の意向を伝えたが、参加者が少ないということで中止になってしまった。一度ふくらんだ海外への気持ちは抑えきれず、10日間ほどの休暇で行ける山を探したが、その中で、心を動かされたのが、MT.ポットのキャットスキーとメスベンのヘリスキーだった。登山の報告ではないが、参考になればと投稿します。

8月10日(水)
 妻の軽自動車を借りて日高の自宅を11時に出発、成田「USAパーキング」に15時20分に到着。
10日間預けて、4620円だった。今回は一人だから割高であるが荷物と成田までの交通費を考えると車も便利だと思う。16時に第2ターミナル着。18:15発NZ90便は約1時間の遅れで離陸。

8月11日(木)
 現地時間の9:30オークランド着、予定していたクライストチャーチ行きの国内線に乗れず、次の便に回された。今回お世話になったNZ在住の旅行業者グローバルネットのヒロ上田氏に連絡したいがこの時点でまだ、両替していなかったので、クレジットカード対応の電話でクライストチャーチの上田氏に連絡をとった。今回ビザとマスターの2枚のカードを持っていったが、なぜかビザは使えず、マスターが使えた。
 13:20 クライストチャーチの空港で上田氏と会うことができ、一安心。ここから彼の車でMT.ポットロッジに送ってもらう。16:00 MT.ポットロッジ着。女性オーナーのMC、ガイドのダグ、シェフのミッキーが出迎えてくれる。上田氏は4日後に迎えに来てくれる約束で別れる。これから4日間は日本語のわかる人がいないのかと思うと少々不安になるが、みんなスキーやスノーボードが好きな仲間だから大丈夫という上田氏の言葉を思い出して、楽しんですごそうと決めた。
 夕食は泊まり客が同じテーブルで会話しながら楽しむ、この日はアメリカ人のグレッグとスペイン人の若夫婦が一緒だった。グレッグの英語は早くてよくわからない。スペイン人は英語の発音がゆっくりなので少しわかる気がした。聞いているだけで精一杯なのだが、たまにこちらに振られて、片言英語で答えたりして、楽しくすごした。
 部屋は、シェアルームといって6つのベッドがならんでいて、トイレとシャワーは同じ棟の共有スペースにあるので一度部屋から出なければならない。日本の山小屋のスキーヤーズベッドの部屋のようである。
しかし、客が少ないので結局4日間、この部屋は自分一人で使っていた。ツインルームと貸別荘のような部屋もある。
 真夏の日本から真冬のNZに行くことに、気温の差で体調を崩すのではと言う不安を持っていたが、ここMT.ポットロッジは雪をまとった山のふもとのわりにあたたかい。日本で言えば11月ごろの気温だと思う。基本的にここは牧場なのだが何百頭もいる山羊は小屋もなく、広い囲いの中で暮らしている。

8月12日(金)
 7:15朝食、コンチネンタルブレックファスト。ガイドのダグが忙しく連絡をとっていた。たぶんヘリの会社や、MT.ポットの山小屋にいる、もう一人のガイドのマイクと話していたのだろう。残念ながら風が強くて今日は、キャットスキーは催行されない。キャットスキーは基本的に雪山の斜面を雪上車で往復して何本かのルートを滑る。ヘリスキーに比べて催行率が高いといわれているが、ここMT.ポットはロッジからスキーエリアへの移動はヘリコプターを使うので風が強いと催行されない。
 あきらめて、部屋でウトウトしていると、アメリカ人のグレッグが、MT.ハットスキー場に行くから一緒に行かないかと誘ってくれた。すぐに準備をして彼のレンタカーに飛び乗る。スキー場まで約1時間半昼過ぎにスキー場に着く、「空のスキー場」と言われるスキーエリアは痩せた尾根の上に無理やり作ったような道路をぐいぐい登った先にあった。日本と違うのはスキー場の中に一本の木もないということ。岩山のような急峻な地形の中に作られたスキー場である。4人乗りのリフトでゲレンデトップにあがっていくと猛烈な風でリフトが止まった。このリフトの上での数分間が今回の旅行の中で一番寒かった。やっとの事でリフトから降りるも、猛烈な風と雪でほとんど視界がない。慎重にゲレンデを降りるがホワイトアウトで斜面がわからず、何度か転んだ。そんな中で3本ほど滑ったが、強風のためスキー場そのものがクローズするというアナウンスがあり、急いで帰ることになった。途中レンタカーの調子がおかしくなって修理工場によるが、すぐには直りそうもない。レンタカーの会社に電話して変わりの車を届けてもらうことになった。その間、村のパブのようなところで時間をつぶす。夕方5時を過ぎると羊飼いのおじさんたちが集まって酒を酌み交わす。村の社交場のような場所である。カウンターとテーブルが4つほどあり、ビリーヤードの台がある。グレッグと一緒にビリーヤードをする。2時間ほど待ってやっと車が届き、夕食時間ぎりぎりにロッジに戻ることができた。

8月13日(土)
 今日も風が強くキャットスキーは中止。読書。昼ごろ"Load of the Ring"と書いてあるトヨタハイエースがロッジに来た。トイレ休憩によったようである。ドライバーにたのんでツアーに参加させてもらうことになった。映画"Load of the Ring"の撮影のほとんどはNZで行われたが、ロッジから5kmほどの岩山MT.サンデーも有名なロケ地の一つである。ハイエースはスタックするのではと不安になるような川を越えて岩山に近づく。岩山のふもとからは歩いて頂上に向かう。ツアー参加者はイギリスからのカップルが2組。ドライバーのOJもイギリス出身だと言う。OJはガイドも兼ねていて、映画の撮影に使われた剣を持って案内してくれた。岩山の上は風が強く、まわりの山々がよく見えて景色のすばらしさに感動した。サンドイッチの昼食までついて40NZ$(約3200円)。他の客に聞こえないように交渉した。

8月14日(日)
 朝食後、グレッグが出発、ビジネスでドイツに行くと言う。とても親切にしてもらったので感謝の気持ちを伝える。今日もキャットスキーは中止。いよいよ時間をもてあます。前日から泊まっているオーストラリア人のカップル、バイロンとアンシアと一緒にまわりの山に登ろうということになった。MT.ポットのふもとを登ってみることにする。沢から登って尾根の上にでた。最後ののっこしが雪のついた泥壁状で悪い。石で壁を掘ってホールドを作って登った。最後は登山靴をはいていて先に登っていたバイソンが私とアンシアを引っ張り上げてくれた。尾根の上はうっすら雪があり、ここで景色を堪能して写真を撮って下る事にした。昨日登ったMT.サンデーが遙か下に見える。昨日よりも天気がよくまわりの山がよく見える。下山は尾根上を歩いて安全だったが、とげのある灌木が多い。
 NZには木が少ない。背の低い灌木は多いのだが樹木が少ない。かつて先住民のマオリ族がモアという大きな鳥を捕るために森を焼き払ったためだと上田氏から聞いた。モアは絶滅し、森はなくなった。気候条件はいいので、最近は松の植林が行われ、日本にも輸出されているらしい。私たちスキーヤーにとっては山に木がないと言うことは、パウダーに出会う機会が少ないということ。雪は降っても、風に磨かれてクラストしやすい。残念ながら、ニュージーランドでパウダーに当たるのは、たとえ、ヘリスキーやキャットスキーに予約をしても難しい事だと思う。 
 ロッジに戻ると、バイロンとアンシアとはお別れである。つかの間の山仲間であったが、楽しい時間を共有できた。夕方の便でシドニーに戻り、明日の朝から仕事だという。なんとパワフルに人生を楽しんでいるのだろう。とても刺激を受けた。午後からは一人でロッジの裏山に登ったり、ロッジの牧場を一周したりしてすごした。牧場は広く、一周するのに30分かかった。
 ついに、キャットスキーに予定していた3日間が過ぎてしまった。天候は回復傾向で明日はキャットスキーが催行される可能性が高い。クライストチャーチの上田氏に電話して、明日の迎えを夕方にしてもらい、ラストチャンスに懸ける事にして、ガイドのダグに伝えた。

8月15日(月)
 7:15 朝食のとき、いつもよりあわただしい。キャットスキーが催行される。7時30分に参加者全員による打ち合わせ。昨夜、宿泊したのはNZの若者、グリークとマシューだけだったのに、朝一で集まった5人を加えて、客は8名。ロッジオーナーのMCとスタッフの女性も一人、ボードを抱えて参加している。
 8:30 ヘリに乗る。5分ほどでまMT.ポットのカール状の地形の底にあるベースの小屋につく。
この小屋には、もう一人のガイド・マイクが常駐しているらしい。
 9:00 ヘリは3往復して、全員が集まった。ビーコンを渡されて簡単な講習。旧式のタイプで特性が違う。自分のビーコンを持ってくるべきだったと思う。
 9:22 雪上車(キャット)の後の座席に10人が乗り込み、ガイドがコックピットに二人でちょうど満員になる。約10分の登り、かなりの急斜面でベンチから滑り落ちそうなのでつり革にしがみついている。みんな期待で顔がほころんでいる。キャットが止まった稜線からはNZの険しい山々が一望できる。穂高や剣のようなアルペン的な山ばかりが延々とつらなっている。この景色を見るだけでも参加してよかったと思う。
 9:30 いよいよ、滑降。私以外の客はすべてスノーボーダー。ガイドの2人はファットスキーにディアミールをつけている。雪質は軽い新雪20pの下にやや硬い層がある。少しひっかかかる感じ。たぶんファットスキーなら下の層にはひっかからないであろう。しかし、ここが紛れもない山の中であることを考えると、とてもいい条件であり、快適な滑降ができることに感謝したい。ガイドのダグは前日に、安全のためにダイナマイトで人工的に雪崩を起こしていた。また、当日もなだれる可能性のある斜面では、意図的にスキーで雪面をきって表層雪崩を起こしていた。これらのアバランチ(雪崩)コントロールがあって初めて安全で快適な滑降ができるのである。午前中、4本、日だまりのランチ、午後4本。いろいろな斜面を楽しく滑り、至福の時間が流れた。それにしても全員がとてもパワフルで、キャットの止まる場所から10分ほどのハイクアップを苦にもせず、ハッピーなボードを楽しんでいた。3時にラストランが終わり、3:30にヘリで下山。4:00 上田氏が迎えに来てくれた。4日間楽しくすごしたスタッフたちにお礼を言ってMT.ポットロッジを後にした。
 5:30 メスベンのサザンクロスロッジに到着。ここでOJに再会、明日、ヘリスキーができなかった時は、彼がMT.ハットスキー場に連れて行ってくれることになる。メスベンは小さな町だが、日本からのスキー客が多い。ロッジのオーナー夫妻、レオとメラリンは親日家で日本の民芸品が飾ってあったりする。日本からの客になれていて、とても親切だし、英語をゆっくり話してくれるので安心する。ワーキングホリデーで神奈川から来たマリモという女の子が働いていて、この日の客も日本人の男性が2人。夕食も魚の天ぷらとご飯だった。昨日までの夕食とは、まるで違う環境でホッとしたような、ちょっと残念なような気持ちになる。部屋はツインルームで清潔で快適。

8月16日(火)
 メスベンでは、ヘリスキーを第一目標にして、飛ばない日はMT.ハットで滑るつもりで、ヘリスキーの会社には日本から予約を入れておいた。6:15に電話が入って今日の中止がわかった。OJのハイエースでMT.ハットへ、やはり風が強い。また、今年は暖冬で雪が少ないようで急斜面は石がでている。全体がボウル状のスキー場で滑りやすいのだが、全面に雪がつけばいろいろなコースがとれてもっと楽しいだろう。この日も2時にスキー場がクローズとなり、3時にはメスベンに戻った。町の中を散歩して、ロッジのとなりの日本式銭湯に浸かってのんびりした。

8月17日(水)
 ヘリスキーの予約を延長していたが、この日も飛ばず、またMT.ハットへ。天候がしだいに回復し、風もなく、晴れ間も出てきたので1日目一杯滑る。同宿の池原氏とランチをとったり、OJの車の中で知り合った韓国人の研修医、李さんとも英語で話したりして楽しかった。明日の予定は帰国に備えてクライストチャーチの観光だったが、ここまで待ってヘリスキーができないのはどうしても残念なので、上田氏に電話して、またまた、予定を変更。クライストチャーチへの移動を夕方のバスにしてヘリスキーの予約を入れることにする。何度も計画を変更して上田氏には迷惑をかけたが、嫌な顔ひとつせずに手配して下さって感謝している。メスベンにメインストリートにあるヘリスキーの事務所に出向いて明日の予約を入れた。日本語のわかるスタッフがいて便利、スキー技術を自己申告するのだが、思い切ってエキスパートにした。同じ料金を払うのだから一番滑れるクラスに入るのが正解だったと思う。ファットスキーのレンタルも申し込む。

8月18日(木)
 待望のメスベンへリスキーの日。朝ロッジに迎えの車が来て事務所に集合。レンタルショップに寄ってから出発、車で1時間ほど山奥に入った牧場がヘリポートになっている。ここで、ガイドと打ち合わせをして、クラスごとにヘリに乗る。今日の参加者は全部で20人ほどだが15人くらいが日本人だった。エキスパートのクラスは4人とも日本人。何度もヘリスキーをしているらしくみんな滑りが安定している。
牧場から離陸して、山脈の上空に。MT.ポットから見た、アルペン的な山脈のど真ん中に降りた。ここからいい斜面を探して、あちこちにスロープを刻む、一本の距離が4〜5qほどあった。雪質はどちらかというとザラメ雪、現地ではコーンスノーという。日本の春山のようだが雪は真っ白である。一部カリカリのバーンや表面がクラストしている雪もあったがおおむね滑りやすい斜面が多かった。何よりも雄大な山のすがたが美しく、この山の中にいること、そこで滑れることの幸せを感じていた。午前中3本、山頂でのランチ、果物、サーモンのサンドイッチがおいしい。午後3本。快晴無風で少しも寒さを感じず、適度にゆるんだザラメの斜面を、みんな笑顔で滑っていた。
 4:00ごろにサザンクロスロッジに戻ってシャワーを浴び、メラリンにサンドイッチを作ってもらって、快適な3日間のお礼を言って6:00のバスに乗った。このバスは空港行きで空港から市内までは路線バスに乗り換えなくてはならない。今日のホテルは大聖堂の目の前、クライストチャーチの観光をキャンセルしたが大聖堂だけはホテルの部屋からもよく見えた。

8月19日(金)
 5:40 グローバルネットの女性が迎えに来て、空港に向かう。空港で上田氏の再会。今回の旅行のお礼を言う。オークランドで乗り換えて、帰国の途につく。成田からは順調に走って8時ころ自宅についた。

 NZのスキーはパウダーに当たることこそ、少ないだろうが、山のスケールが大きく、そこまでのアプローチにあまり時間がかからない事を考えると、充分に魅力的だし、探せばまだまだ、楽しいフィールドが沢山あるだろう。交通量が少なく、左側通行なので、レンタカーで移動するのもいいと思う。また、夏場はトレッキングルートが多く、山小屋も安価で充実しているというので、ぜひ、日本の冬場にも訪れたい国である。手つかずの自然が残っている事、治安がいいこと、親切な人が多いことなど、とても魅力的である。今回、お世話になった人々に感謝している。