山スキー記録    熊谷トレッキング同人

‘登りまくり、滑りまくりの3日間’
    GW北アルプス 雪倉岳山スキー


山域山名:北アルプス・雪倉岳北面(新潟県)
期  日:2005年5月2日(月)〜5日(木)
参 加 者:CL宮田 SL木下 浅見、青木、井上(計5名)
行動記録:
5/2 熊谷(21:30)=白馬(24:30)テン泊

 夜、埼玉を出発し上信越道を通って長野市へ。オリンピック道路の途中にある駐車施設にテントを張った。地面は芝でトイレも近く、快適なテントサイトであった。ただし、ずいぶんと冷え込んだ夜で、薄いシュラフでは寒くて安眠は出来なかった。

5/3 栂池ロープウェイ自然園1830m(8:40/9:10)→天狗原2130m(10:00/10:15)→
 白馬大池北側滝見尾根2380m(11:30/昼食/12:20・滑降)→露天仙気の湯1550m(12:50)
 …入浴…→蓮華温泉ロッジ1470m(14:10)

 井上君と駐車場で合流し、二台の車で猿倉へ向かう。山小屋近くの駐車場に井上車をデポし、もう一台で栂池のスキー場へと移動した。こうしておけば、猿倉への下山後がスムーズである。ゴンドラに乗ってスキー場上部へと上がり、さらにロープウェイに乗りかえる。乗客はリュックとスキーを持った人間ばかりで、けっこう混み合っていた。窓からは厳冬期に歩いた林道が見える。栂池自然園で吐き出された乗客たちは、駅の前の広場で準備を済ませて天狗原へと歩き出していった。
 我々もシールを貼り付け、日焼け止めを念入りに塗りつけて出発である。天気は無風快晴、暑くなりそうだ。Tシャツ一枚でも登っていると汗ばんでくる。天狗原への登りでは半分くらいのスキーヤーがシートラーゲンであった。シールの方が背中が軽くて楽だと思うのだが不思議である。左手には二日後に滑る予定の金山沢から白馬岳、八方尾根が見渡せる。この景色に気をとられながら登っていると、あっという間に天狗原へ到着である。ヘリスキーのためヘリコプターが頻繁に行き来し、空荷のスキーヤーやボーダーが滑り降りてくるのがちょっと興醒めであった。
 白馬乗鞍の斜面にはつぼ足で上がる人の列が一直線に続いていたが、我々はスキーを履いたままジグザグに登っていった。昨年、乗鞍の広い山頂は雪が無く、つらい夏道歩きをして懲りている。今年は山頂を右手に回りこみスキーを脱がずに行く算段であったが、こちらもやっぱりハイマツが出ていた。しかし多少は雪が残っており、去年よりはましであったが。この辺りは風が強いたか、多雪の年でも雪付きは良くないようだ。ハイマツ帯を抜けると真っ白な白馬大池へ出た。ここで大休止を取り、いよいよシールを外す。
 滝見尾根を蓮華温泉まで、約800メートルの大滑降である。出だしは林間をトラバース気味に進み、そこから一気に急斜面を滑り降りた。尾根を右に回りこむと、蓮華温泉の赤い屋根が遥か下に小さく見える。去年この斜面で大転倒し、眼鏡を紛失した井上君も軽快に飛ばしていく。一年でかなり腕を上げたようだ。
 あっという間に蓮華温泉上にある露天風呂へ到着。ブーツを脱ぐ時間ももどかしく、温泉へ飛び込んだ。先客は居らず、我々だけで貸切である。明日登る予定の雪倉岳の雄姿を眼前にしながら、青空の下でつかる温泉は格別であった。ここは正に山スキーヤーの楽園である。

5/4 蓮華温泉(6:25)→滝見尾根鞍部1465m→瀬戸川・滝ノ沢出合スノーブリッジ1380m(7:25)
 →雪倉の滝上部(8:15)→雪倉岳(11:15/昼食/12:05・北面滑降開始)→
 赤男山下部1750m(12:35/コーヒー/13:00)→瀬戸川1170m(13:30)→兵馬ノ平1330m(14:00)
 →蓮華温泉1470m(15:00)

 今日も快晴、元気に出発である。蓮華温泉から等高線沿いに小尾根をいくつか越えていくと瀬戸川へと出た。トラバースでなんだかんだと時間がかかり、兵馬ノ平に出た方が早いという話は本当かもしれない。沢底にはスノーブリッジが残っており、難なく超えることが出来たが、雪解けの早い時期は厳しいかもしれない。
 いよいよここから1200mの登攀の開始である。雪倉の滝下のカール状の沢をシールをつけて登り始めると、早速汗ばんできた。途中から急登となるが、なんとかシールで上がる。傾斜がきつくなった所で雪が切れ、ハイマツの出た小リッジを右に乗っ越すと大きな沢の底へ降りた。標高1600m、滝の上に出たようである。ここから板を担ぎシートラーゲンで登る。傾斜はかなり急でシールではきつい。急登が一段落すると、山頂へと続く大斜面の末端に出た。けっこう風が強い。

 我々はここでスキーを履きシール登高とし、左手の稜線へ取り付いた。今日は他にも多数のパーティーが蓮華温泉から上がっていたが、その多くが右手に見える尾根にシートラーゲンで取り付いていた。山頂を睨みながらコツコツと登って行くと、次第に傾斜が緩くなり、意外とあっさり山頂へ出た。右手の尾根に取り付いたパーティー達は徐々に増す傾斜に苦労しているようで、遅々として進んでいないようであった。こちらのルートの方が正解である。
 山頂にはすでに大勢の先客がいた。その殆んどは山スキーヤーで、白馬山荘から来たパーティー達であった。山頂では西からの強風が吹き荒び、岩陰に居ないと立っていられない様な状況であったが、空は殆んど雲の無い快晴であった。眼前に白馬岳、遠くは立山の山並を見渡せる山頂は絶景であった。大休止の後、シールを剥がして滑降の準備をする。
 いよいよ今山行のメインイベント、雪倉岳北面のスキーである。先に下りていったパーティーは、我々の往路である雪倉ノ滝方面へ降りていったようである。山頂から稜線沿いに北へ少し進むと、そこから北面の大斜面へと滑り込んだ。眼下に見える赤男山に向かい、広い急斜面がズドンと落ち込んでいる。傾斜は強いが良質のザラメ雪であり、ジャンプターンでこなしていく。最高のシチュエーションによって放出された脳内麻薬の作用も手伝って、どのメンバーの顔にも恐怖のためらいは無く、「悦楽」の一色であった。もし雪質がアイスバーンであったらかなり厳しかったと思うが。
 1700m地点で大休止を取った。いつの間にか赤男山は背後になっていた。そこからデブリが一本伸びてきている。この辺りに来るとさすがに雪質も落ち、雨が流れたために雪面が縦に波打っていた。お茶をすすりながら滑ってきた斜面を振り返り、しばし余韻に浸った。
 白高地沢の右岸を滑り、蓮華温泉へと向かう。無木立の斜面は林間へと変わり、細かいアップダウンが続く。春の日差しは強く、汗だくになって進む。山頂では凄かった風はこの辺りではまったく吹いていなかった。スキーを担いで瀬戸川の橋を渡り、そこから急斜面の辛い登り返しを経て兵馬ノ平へと出た。ここでシールを付け直し、だらだらと続く緩斜面を登ってロッジへと到着した。行動時間は約8.5時間。天候に恵まれ、足も揃っていたので、実に順調な1日であった。小屋の前でのお約束のビールが、乾いた体に美味であった。

5/5 蓮華温泉(6:30)→滝見尾根2093m(9:00)→白馬大池南西2480m(10:40/昼食/11:30)
→夏道→船越の頭2612m(12:00/12:20)→金山沢滑降→猿倉1230m(13:12)

 昨夜はゴーゴーと風が吹き荒れていたが、朝になると収まっていた。今日は最終日、山小屋ともお別れである。全ての荷物を背負い、下界へ向かって出発した。空は晴れているが湿気を増してきている様子で、天気は確実に下り坂にあるようだ。だが今日一日くらいは持ちそうである。
 昨日トラバースした滝見尾根に取り付き、シールでエッチラオッチラ登っていく。およそ1150mの急登である。途中、一頭のカモシカの後を追う形になるが、急いで逃げる様子も無かった。標高を上げるにつれて傾斜がきつくなってきた。気がつくと尾根の東側の急斜面を、多数のパーティーがシートラーゲンで上がってきていた。夜からの冷え込みで斜面は硬く締まっており、キックステップを繰り返しているようである。我々はそのままシールでの登高を続けた。ところが、もう一登りで傾斜が緩むという所で、先頭を歩いていた青木さんが滑落してしまった。傾斜は30〜35度位、硬く締まった雪面は摩擦が無く、あっという間に滑り落ちていく。「止まれー」と誰かが叫んでいた。50mくらい落ちたところでようやく止まったが、ちょっと冷や汗ものであった。あの場面ではアイゼンで登るのが正解であったかもしれない。反省。
 傾斜が緩くなった所で再びシール登高となる。尾根の西側を斜めに登って行き、いつまでも続く登りでいい加減いやになってきた頃にようやく白馬大池へと出た。大池から一登りした所で大休止をとる。この辺りの雪はすでにグサグサであった。ここからは雪の無い夏道をスキーを担いで登っていく。いつの間にか気温は上がってきており、重い荷物を背負った背中にはじっとりと汗が滲んでくる。ようやく稜線に到着。気持ちの良い風が吹き抜けていた。金山沢は人気のルートであるため、稜線にも斜面の中にも大勢のスキーヤーの姿があった。出だしはかなり急斜面で部分的に50度はありそうだが、下に行くにつれて緩やかになる氷河地形のためか、それほどの恐怖感は無い。とにかく横にも縦にも大きな斜面である。遥か下のほうには、自然園から上がってくるパーティーが小さな点の連なりとして認められる。
 3日間の山行のフィナーレを飾るには十分な大斜面である。船越の頭の直下は雪が割れていたため、少し戻ったところから斜面に滑り込んだ。メンバーたちは一様に顔を輝かせながら、斜面の向こうに消えていった。ラストの私は、右手の白馬岳から左手の栂池まで滑らかに広がる、雄大な雪の殿堂を瞼に焼き付けてから、傾斜の強そうな所を選んでドロップインした。雪質に不安は無く、どんな傾斜でも行けるような気がした。ジャンプターンを繰り返し高度を下げていく。思ったとおりエッジの効きが良い。少し傾斜が緩んだところで一息つくと、他のメンバーたちはずっと下の方まで行っていた。私も負けじとスピードを上げて後を追った。
 上部が広い金山沢は中部から急に狭くなる。右岸から出たデブリをやり過ごすと再び斜面は広くなり、一気に滑り降りた。途中で振り返ると金山沢の大斜面が眼に入る。「ウーン満足!」大雪渓に合流したところで少し上り返し、そこからは雪の残る林道を滑って行った。難なく猿倉へ到着。全員が揃ったところで、3日間の労をねぎらった。
 3日間の滑降標高差は約3500m、登りもほぼ同様。実にスケールのある山スキーであった。最初から最後まで天気に恵まれ、強いメンバーが揃っていたから可能であったと思う。これだけのゴールデンウィークはなかなか無いだろう。          (木下記)