山スキー記録    熊谷トレッキング同人

厳寒の北海道、舞い上がる‘激パウダー’を滑る
2006 北海道遠征報告


空路より那須連峰

山域山名:大雪山系・旭岳、十勝岳山系・富良野岳、三段山(北海道)
期  日:2006年2月10日(金)〜13日(月)
参 加 者:CL宮田 SL大嶋 浅見、南雲、駒崎、木下、小河(計7名)

行動記録:
 ‘真冬の北海道・大雪山’。ニセコを凌ぐ軽い粉雪への憧れと期待…、本州の山に比べ格段に厳しい寒気が支配する山…、パウダーを滑る山スキーヤーにとっては特別な山である。一昨年から同人の仲間の北海道遠征が始まるが、小生は諸般の事情で参加できずにいた。「今年はもう我慢は出来ぬ」、と気合いを入れての北海道入りである。

2/10 「朝一番便でパウダー待つ大雪山入り、しかし…裏山3本で‘欲求不満’募る」

北本(4:10)=羽田空港着(5:40)…JAL羽田発(7:35)=旭川空港着(9:20/9:30)=【タクシー】=旭岳温泉着(10:20)…裏山を登る(11:30〜12:30)…宿で昼食…再び裏山(13:30〜16:00)
(天候:雪)

 熊谷の最低気温マイナス6℃と今冬一番の冷え込みとなった早朝、旭川行き第一便に搭乗するため北本宮田邸に集合し、首都高で羽田空港まで移動する。空港最上階展望レストランで朝食セットを取りながら、滑走路越しの美しい富士山を眺める。冬型明けの快晴、機上の車窓からは山岳パノラマの大絶景が展開する。富士山から南中北アルプス、谷川から越後駒までの越後大山脈、眼下には日光から尾瀬や会津、那須茶臼の火口や磐梯山、はるか日本海まで見える。山形市以北からは冬型の雲に包まれ、雪の旭川に着陸する。磐梯山

 旭川空港の積雪は1m程度と上越の半分以下だが、気温はマイナス9℃、空気がピリッとしている。今年の旭川は平年よりも寒く、1月には晴れの日が多かったためいつもより少雪であるが、2月はほとんど雪の日が続いているという。予約していた9人乗りジャンボタクシーで今日の宿がある旭岳温泉湧駒荘に向かい、フロントで無事にスキーと荷物を受け取る。旭岳ロープウェイの運行を確認すると、今日は朝からは運休していると告げられる。今朝の姿見駅の風速は17m、規定の15mを超えると運休であるらしいが、八甲田ロープウェイの25mと比べると軟弱ではないか?、温泉付近はほとんど無風だし今日は平日で客がいないからか?、と気合いが肩すかしを格好で不満節が出る。

 せっかく大雪山の麓にいるのに昼前からゴロゴロしていても仕方がないので、地図を広げて滑れそうな斜面を探すが、温泉周辺は火山の裾野でどこも傾斜が緩い。道路を挟んで反対側に短いながらも滑れそうな斜面があるので、そこまでシールで登ることにする。フロントに昼食用の温かい蕎麦を頼んで出発する。溶岩流の跡だろうか、大きな岩が所々雪の隙間から見える。ラッセルは膝下程度、標高差80m登ると台地上に出た。蕎麦の時間が迫っていたため、すぐに滑降体制に入る。しかし傾斜が緩く、段差があって雪面が一定でない。ほとんど滑った感覚なく車道へ出てしまった。

 蕎麦を食べて再度出発。今度はトレースをさらに北東に進んで、旭岳ロープウェイ駅西側のさらに急な斜面を目指すことにする。こちらの斜面は斜度35度、深雪も溜まったなかなか良いバーンであった。流れが出ていた沢からもう一度登り直して、もう1本滑る。やっと「ヤッホー」の雄叫びが出た。

 車が滅多に通らない車道を直滑降で宿まで戻り、まずは1日目に行動が終わった。皆、欲求不満顔ありありであった。湧駒荘は旭岳温泉の湯元だけあって、源泉の違う5つの風呂がある良い宿であった。温かい美味しい料理がたくさん出て、実質8千円で泊まれるのは嘘のようだ。

2/11 「旭岳アタックは視界不良で中止、でも期待の‘激パウダー’滑りまくりだ!」

終日旭岳ロープウェイ滑降:午前3本、午後3本
旭岳温泉(16:30)=上富良野で買い出し=吹上温泉(18:40)
(天候:雪、森林限界上は吹雪)

 昨晩から雪が強く降り続き、新たに20pほど積もっている。富良野から車を走らせて来た小河君と朝8時に宿で合流する。小生とは野地温泉での村越先生退職祝いの会以来の再会である。朝8時30分にフロントで聞くと、今日はロープウェイが運行しているとのこと。麓では明らかに昨日より風があるのに…。

 荒天のため期待薄ではあったが、アイゼン&ピッケルなど旭岳アタック装備をザックに入れて朝一番9時発のロープウェイに乗り込む。今日は祝日の土曜日なのに、客は我々パーティ含めて30人もいない、。やはりここは北海道、八甲田の激混みとの違いに驚く。

 姿見駅の天気は雪、積雪2m50p、気温はマイナス15度、風速13m。視界は10mほどで真っ白な世界しか存在しない。これでは旭岳アタック無理だ、中止にしよう。さあ、それでは滑降モードに切り換えよう。皆、言われるもなく気合い満々の顔だ。ゴーグルを装着して、舞い上がるパウダーに備える。今日は、小河君の友人北大探検部OB2人も札幌から駆けつけている。総勢9名パーティだ。

 この旭岳スキー場、山頂駅から指定されたコースが2本あるが、ロープウェイ1本しかないこのエリアでコース内をまじめに滑っているスキーヤーは滅多にいない。皆、雪崩の危険を回避しながらの急斜面滑降が目的だ。

 小河君を先頭に最初はコースを示すポールの中をラッセルで進む。まったくトレースのない傾斜の緩い場所は下りラッセルだ。ここ数日の降雪で、小河君も雪崩警戒でルート取りをしている。まずは、ノーマルなAコース(北大山スキー部では「盤の沢」と呼んでいる)を滑るが、雪が深すぎて滑らない。視界も効かず1本目は楽しめなかった。2本目は上部でAコースを右手に逸れてボール状の沢「αβ沢」に飛び込む。樹林帯はパウダーが溜まっている。急な壁を攻めていくと粉雪が頭上を越えていくオーバーヘッド連発だ! 一瞬舞い上がる雪で視界が真っ白となる、まさしく真の‘激パウダー’に「ヤッホー」の雄叫びだ。午前3本目は、「盤の沢」と「αβ沢」の間の小尾根「β尾根」を滑る。ここも最高だ。遙か北海道まで来た甲斐があったというものだ。素晴らしい斜面では、小河君がスチールカメラを、探検部がムービーカメラを構えている、皆、雄叫びを挙げての気合い入れまくりの滑りだった。午後は再び「β尾根」、次にロープウェー真下の「α尾根」を攻める。最後の1本は、大嶋さんと駒崎さんはお疲れ様。パウダー狂7人衆はみたび「β尾根」へ。

 たっぷりと滑って万腹状態で宿に戻る。湧駒荘で大荷物をまとめ、小河君パジェロ、細川さんランクルに分乗して上富良野へ向かう。Aコープで買い出しを済ませ、今宵の宿・十勝岳山麓の吹上温泉白銀荘へ。こんな山奥に大きく真新しい素泊まり施設(あくまでも日帰りが主です)があるとは驚きだ。まずは天然温泉100%の風呂で体を温める。あとは賑やかな鍋宴会となった。


2/12 「富良野岳ホコ岩上に到達、ベベルイ川源頭でまたもや‘激パウダー’を滑る!」
吹上温泉1017m(7:45)=バーデンP1015m(8:00/8:10)→三峰山沢徒渉点1010m(8:20)→ベベルイ川1110m(9:00/9:10)→富良野岳G尾根1410m(9:50/クトー装着/10:15)→1690m(11:40/11:45)→ホコ岩上1730m(11:55/12:00)→ベベルイ川源頭滑降点1670m(12:50)→源頭1660m(13:00/シール外す/13:20)→G尾根1280m(14:00/昼食・シール装着/14:30)→G尾根1500m(15:10/シール外す/15:25)→三峰山沢徒渉点1010m(15:50)→P1015m(16:00)=吹上温泉(16:20)
(天候:雪、森林限界上は吹雪)

 強い寒気の南下で冬型が強まり、北陸では大雪の予報が出ている。ここ白銀荘は小雪舞っている程度だが、気温マイナス17℃を指している。今日はかなり寒そうだ。目指すは今遠征の実質的なメイン、富良野岳ジャイアント尾根と北尾根とのジャンクション・ホコ岩だ。過去2年、森林限界で敗退しているだけに、厳冬期のこの時期は条件が揃わなければ登れない場所だ。

 2台の車に分乗してバーデンかみふらの前の駐車場へ移動。まずは三峰山沢を石づたいに徒渉する。今日は先行者のトレースがあるため、樹林帯のラッセルはない。北尾根を巻き気味に登り、1110mで雪に埋まったベベルイ川を超え、ここからジャイアント尾根に取り付く。尾根下部の傾斜は20度ほど、大きなエゾマツの大木の間を登っていく。何とも北海道らしい風景だ。森林限界下の1410mまで難なく到達する。東向きの風下斜面に移動し、ここからの上部強風帯に備え、目出帽、厚い手袋、ゴーグル、クトーを装着して完全装備とする。

 尾根に上がると、次第に右手(北西)から風が頬を叩く。過去2年の下降点1500m付近で今後の行程を協議する。これから上部は傾斜が増し、条件がさらに悪化する分岐点だ。今回のパーティはAチームの屈強メンバーが主力、風はどうにもならないほどでもない、小河君と揃えばアタックだ。ホコ岩を目指すパーティは他にはいない。さあ、ここからが厳しいぞ。

 ハイマツ混じりの波打った斜面、硬い雪にクトーを効かせて登って行く。1550m付近で探検部2人は時間切れで下山、お礼を言って別れる。小河君を先頭にさらに高度を上げていくと、いくらか傾斜が緩んで来た。帰路の下降点、雪庇の切れ間を探しながら進む。1690m付近で小休止、この辺りならベベルイ川源頭に滑り込めそうだ。ジャンクションまであと少し、そこまでがんばろう。

 傾斜がなくなった広い場所が1730mジャンクションだ。吹雪の隙間からおぼろげにホコ岩が見下ろせる。よくここまで来たね。でも長居している時間はない。手元の温度計はマイナス21℃、北西の風10〜15mほどか。本州に比べしっかり1枚多く着込んでいるが、とても寒い。シールを履いたまま下降を始めるが、波打ったハイマツ混じりの斜面に手こずりなかなか高度が下げられない。稜線で吹かれていると体が震えだした。まずい低体温症の前兆だ。登りの休憩点を少し過ぎた1670m付近で今後の行動を協議する。

 このままシールで尾根を下降するには時間がかかりすぎる、風による凍傷も怖い。スキーで滑れれば一番早く降りられるが、沢での雪崩が問題だ。地形を熟知する小河君によると、ベベルイ川源頭の斜度は35度位。ピットを掘って今日の雪の状態を確認すると行けそうだとの返事。緊張した判断となったが、ここから源頭に滑りこむ決断をする。メンバーのスキー技術を考慮し、安全のため源頭への出だしの急傾斜はシールで降りることにする。先頭の小河君が慎重に源頭に進み、下から「OK」のポーズが見える。よし行くぞ、雪崩れ警戒のためスキーの流れ止めとストックリングを離し、間隔をあけて順番にゆっくり進む。源頭は風も落ち着き、視界はあまりきかないもののホッと一息つけた。

 さあ、ここからは滑降モード突入だ。最初は、雪面が落ち着かずテールが引っかかったが、1600m付近からは昨日を上回る激パウダーとなる。斜度30度の大斜面、疎林を間をターンしていくと、またもやオーバーヘッド連発だ! 1400m付近でトラバースして左のG尾根樹林帯へ、ここも軽い深雪たっぷりで最高に気持ちよかった。

 無風の1280m樹林内で昼食を取る。しかし、とてもとても寒い。素手になる気が起こらず、厚い手袋と目出帽をしたままパンをかじる。無風の樹林内でこんな寒さは経験したことがなかった。時間はまだ午後2時過ぎ、このまま下山するのはもったない。少々後ろ向きな他のメンバーを鼓舞して、もう1本滑ろうと気合いを入れる。大嶋さんと駒崎さんはそのまま下り、残り5名で1500mまで登り返す。今日2本目の滑降は、もう攻めまくるほどの筋力は残っていなかったが快適なツリーランで締めくくる。最後は流すように入山口の三峰山沢徒渉点へ、一気に下ってフィナーレとなった。

 小河君にしても「素晴らしいパウダー」と言わしめた今日の最高の条件、忘れられない1日となった。しかし、小生のほか数名がゴーグルと目出帽の隙間、鼻、頬に軽い凍傷を負ってしまった。北海道の寒気はやはり厳しかった。

 小河君とは白銀荘でひと風呂浴びた後にお別れとなった。小河君の案内で充実した北海道の山を満喫出来た。感謝、感謝。

2/13 「地吹雪の三段山へ、強風に吹かれ滑降もひたすら忍耐のスキーに」

吹上温泉1017m(8:00)→ナマコ尾根1160m(8:35/8:45)→
森林限界1300m(9:25/クトー装着/9:40)→三段山1748m(11:00/11:25)→1300m(12:20/12:40)→吹上温泉(13:00)  吹上温泉(15:50)=【タクシー】=美瑛の丘=旭川空港(17:50)AIRDO旭川空港(18:10)→羽田空港(19:55/21:00)=北本(22:30)
(天候:雪、森林限界上は地吹雪)

 暖気を伴った低気圧が上空を通過中のため白銀荘の気温はマイナス10℃と暖かいが、本格的な雪が降っている。今日も風が強そうだが、最終日の締め、三段山までがんばろう。白銀荘前から、昔スキー場があった跡の切り開きを進む。三段山は火山活動の影響があるのか、森林限界が1300mと富良野岳より200mも低い。目出帽やクトーを装着して、今日も完全装備で強風に備える。登っていくうちに風が強くなり、次第に地吹雪状態となった。いや、寒い寒い。
吹雪の三段山山頂
 時折、体がもっていかれるほどの烈風に耐えながら登り、何も見えない三段山に到着する。とても休んでいられる環境ではなく、剥がしたシールをザックに放り込んで滑降体制に入る。視界が悪いため前者との間隔を空けずに滑る、見失うと危険だ。小さな沢斜面に入っても雪面とガスの区別がつかず何とも滑りづらい。強風は相変わらず容赦なく体を叩き、樹林帯に逃げ込むまで忍耐のスキーの連続であった。樹林帯に入ると、少し気分を取り戻してパフパフのパウダーを楽しみながら白銀荘へ。今日も厳しい山であった。

 ひと風呂浴びて、宅急便で送る荷造りをする。結構これが大仕事であった。予約したジャンボタクシーに乗り込み、旭岳空港へ向かう。途中で美瑛駅、ケンメリの丘、セブンスターの丘を観光し、早めに空港に到着する。ロビーに入ると、大雪で「欠航」の文字が目に飛び込む。え、まさかと皆あ然とする。エアドゥカウンターに走ると、遅れていた午後2時30分発前便がちょうど20分後に出発するとのこと。迷わずその場でチェックインして、急いで土産を買いこみ搭乗口に直行する。あと10分空港到着が遅かったら、もう1泊となったかもしれなかった。皆、本心から胸をなで下ろし、飛行機に乗り込んだ。

 真冬の大雪・十勝、山を支配する寒気、気象条件はとても厳しかった。しかし、この条件を克服してこそ日本最高の粉雪、厳寒の登山を楽しめるのだろう。旭岳登頂は次回へのお預けとなったが、新たな課題を発見し、もっと登山技術を高めなければならないと感じました。まさしく完全燃焼の4日間、素晴らしい仲間と全てを知り尽くした小河君のおかげで、楽しくそして充実した北海道遠征でした。厚く感謝の礼を申し上げます。(宮田記)


「禁断の扉を開けてしまった・・」       浅見政人

 長いこと雪山に通って、しびれるコースは沢山あった。しかし、北海道の乾燥した深い粉雪を滑るのは、特別に気持ちよく、逃れられない誘惑につかまってしまった気分である。フワフワした粉雪の中に胸まで沈み込み、次の瞬間、たわんだスキーの反発力を利用して、舞い上がる雪の中を自分の身体も空中に浮かび上がり、やがてまた柔らかい雪の中に沈んで行く。たとえ、凍傷で鼻の皮がむけても、たとえ、休暇を取るためにどんなに苦労しようとも、たとえ、家庭のあきれた顔に気を遣おうとも、すべてを振り払う歓喜の一瞬がその斜面にある。もちろん、雪崩、寒さ、風雪のためのルート喪失などのリスクが伴うことを覚悟しなければその斜面に近づくことはできない。より一層の経験と学習を積み重ねて、また、あの斜面に立ちたいと思う。

 3年連続で北海道をガイドしてくれている小河さんがいなければこんな経験をすることはできないだろう。そして、ともに粉雪に魅せられた仲間たちがいるから喜びは増幅していく。小河氏、一緒に滑った北大探検部OBの2人、宮田リーダーをはじめとする参加メンバー、留守本部を引きうけてくれた熊トレの仲間たちに感謝したい。また行きましょう。


「北海道遠征」の感想      木下宏文

 昨年に引き続き、二回目の北海道スキーである。昨年は単独で車中泊をしながら回ったのだが、運悪くずっと新雪が降っていなかったために、あまりパウダースノーを楽しむことが出来なかった。おまけに旭岳のロープウェイは強風ということで動いていなかった!しかし、今年は降り続く冷たく乾いた雪という幸運と、現地の小河氏のガイドのお陰で「北海道」のパウダーを堪能することができた、感謝。

 しかし、楽しい事だけというわけにはいかず、厳しい寒さと風により顔が軽い凍傷になってしまった。20代の時に、年末の北アルプスでやられて以来の事である。気象条件としては同じくらいの感覚でいいのかもしれない。一歩でも間違えると遭難しかねない厳しさがあり、結果としてはOKであったがニアミスの場面もあったと思う。

 なかなか行くのは大変だが、厳冬期の北海道にはその価値がある事を改めて知った山行でした。皆さんお疲れ様でした。