鳥 海 山
山域山名:東北 鳥海山
期日:2021年7月19日(月)20日(火)
参加者:L橋本 須藤
行動記録
18日 熊谷12:00=東北道山形道経由酒田中央IC=鳥海高原ラインP20:00泊
19日 滝ノ小屋登山口P5:45-千畳ケ原9:30-御浜小屋11:00/11:30-大物忌神社(おおものいみじんじゃ)御室小屋15:00 新山往復(1H) 御室小屋泊
上:神秘的な鳥海湖 中:御浜小屋近くのキスゲお花畑 下:千蛇谷
<天気晴れ>18日の午後埼玉を出て、東北道、山形道利用で酒田市まで来た。酒田漁港で夕食の予定だったが、コロナの影響か閉店時刻が早く、海鮮丼を食べることができなかった。夕食はコンビニの物で済ませた。暗くなると、月が出ていきたが、白鳥座、北斗七星、カシオペアなどたくさんの星が出ていた。静かで高原らしく涼しい。
滝ノ小屋登山口駐車場で早めに目を覚まし、朝食をとり、出発した。目指す鳥海山は北にはっきり見える。何本もの雪渓が眩しい。
滝ノ小屋登山口駐車場から、道を登り始める。背の高くない広葉樹が周囲を覆っている。道は四角い石が敷き詰められ、登りやすい。天気も良く気分が高まる。こじんまりした滝ノ小屋前を通過する。小屋の標高1300mほどだが裏手に雪渓が見える。小屋から右手に曲がり、しばらく、道というよりも沢を右左に移りながら、登る。小滝の白い飛沫が朝日に映える。樹木や草は低くなり、草原風になる。沢を離れ、八丁坂の本格的な登りになる。小屋が次第に小さくなる。草原は低く酒田市の街と田園、日本海が見える。チングルマ、イワカガミなど高山植物の花が朝日に映え色鮮やかだ。鳥海山は、標高1300m位からミズナラなどの広葉樹も低く、他の草と同じような高さで草原を作っている。普通森林限界は標高2500mと言われるが、鳥海山には亜高山帯の針葉樹が無く偽高山帯になっているという。多量の積雪とそれが残雪になるため、樹木が成長できないようだ。。蔓性のクレチマスのような紫の花も咲いている。自生だが色鮮やかだ。河原宿の平原の手前は坂も急になり汗が噴き出る。大岩も目立ち荒々しい。河原宿小屋(廃屋)が見え、一気に広い草原が広がり鳥海山がその向こうに聳え立ち心字雪大雪渓が白く大きい。近くにはハクサンフウロが色鮮やか。小屋の前には小川があり、雪渓の雪解け水を清らかに流す。ここで小休憩。少し進んで分岐を左に進む。単純な山頂往復ではつまらないので、千畳ケ原を通り、鳥海湖を見て、千蛇谷を通り山小屋に行く計画だ。月山森の鞍部まではなだらかな平原が続き、雪の溶けた場所にチングルマが群生している。木道も整備され歩きやすい。イワイチョウは至るところに咲いている。小さなボタ池を右に見て進むがなだらかな高原といった雰囲気だ。月山森分岐を過ぎ標高差150mほどを下ると千畳ケ原だ。この下山道は直径1、2mの大岩ごろごろの沢地形で段差があり、下るのに苦労する。左右に灌木があり、掴まり下る。目の先に千畳ケ原の広大な草原が見えるのでもう少しと注意して下りる。最後には大きな庇状になった雪渓があった。汗をかき、喉も乾き、沢の水で喉を潤してから千畳ケ原を横断する。傾斜が緩く、大きな草原で寛げる。左側に池塘があり周辺に黄色のニッコウキスゲの群落があり目を楽しませる。幾つかの小沢を越え、T字分岐を過ぎ、沢沿いに鳥海湖に向かい登りにかかる。雪渓が登山道にあり、その右側を登る。日差しが強く、雪渓が眩しい。鳥ノ海分岐を左に進むと直ぐに鳥海湖が現れ、残雪を湖面に映していた。御浜小屋も見える。標高を上げ、御浜・鳥海湖分岐付近に至ると、黄色いニッコウキスゲの花が一気に増える。登山者も増える。アザミやヨツバシオガマも目立つ。ハクサンイチゲも白い花が目立つ。御浜小屋手前の鳥海湖を望むお花畑の中で昼食とする。
扇子森を過ぎ、少し下ってから登りにかかる。チングルマとハクサンイチゲが混生していて、よく見ないと区別できない。七五三掛(しめかけ)を過ぎ、左方の千蛇谷に下る。道は狭く、下りの斜度はきつい。ここから谷を見下ろすと千蛇谷の大きさ、雪渓の規模、右の崖の荒々しさに圧倒される。白いガスが雪渓に立ち込め新山幽谷という雰囲気だ。雪渓を渡り、右岸を登る。さらに枝沢の雪渓を登り、斜度はさらに増す。ヨツバシオガマが厳しい環境に負けず咲いている。それにしてもこの千蛇谷の対岸の外輪山崖地は節理があり今にも崩れ落ちそうだ。左の新山側も見上げれば大岩ゴツゴツと今にも落ちてきそうだ。こんなやせ地にもイワブクロは大きな花を付けている。ミヤマキンポウゲの黄色も目立つ。斜度がきつく、ペースは大分遅くなったが、3時に鳥居がある御室小屋に着いた。この山小屋は純粋な山小屋でなく大物忌神社の経営で、参拝者の便宜を図る宿泊施設のようだ。険しい崖の外輪山が南側に立ち上がり、西に千蛇谷が下り、北には新山の大岩の塊があり、山小屋としてのロケーションは最上のランクだろう。
一休みしてから、新山に登る。山が割れてできた角々の大岩の積み重なった山だ。ペンキの矢印に沿って三点確保で、落ちないように登る。巨大岩の割れ目を抜け、2236mの頂上に立つことができた。眺望抜群で、秋田県方面も見え、左に続く男鹿半島の影も分かる。下りは登りとは別の北側ルートで下る。岩場はすぐに終わり、雪渓上に出た。雪渓を回り込むと御室小屋で無事新山登頂を果たす。 (橋本記)
上:七高山登頂 下:稜線の岩場にイワキキョウが咲く
20日 御室小屋6:20―七高山(しちこうさん)6:55/7:15-伏拝岳(ふしおがみたけ)7:55/8:05-雪渓抜け9:50-河原宿10:10-滝ノ小屋11:10-滝ノ小屋登山口駐車場11:25=(山形道、東北道)=熊谷19:25
<天気晴れ>4時半、影鳥海が見えるとの声で目を覚ます。日本海に裾を長く引いた秀麗な庄内富士の影が大きく酒田港の左に浮かぶ。千蛇谷の荒々しさは微塵も感じない。昔月山から見た美しい姿そのものだ。
5時半から2人で外の石テーブルを使い朝食を軽くとり出発する。今日も好天だ。宿から一度下り千蛇谷上部雪渓を渡り外輪山壁にとりつく。鎖等があるが危険は無く、稜線に出ると一気に眺望が展開する。10分ほど北に進むと外輪山ピークの七高山に着く。昨日新山山頂で見た男鹿半島、岩木山などが美しい秋田の海岸線の先に今日も見える。南、東には月山、栗駒山などが、近くは雪渓の白と緑のまだら山腹が美しい。昨日苦労した千蛇谷ルートや新山の最高部をクリアに認識できる。記念写真を撮りしばらく風景を堪能し、気持ちの良い稜線歩きを楽しむ。振り返ると昨夜の宿も大分上に見える。行者岳を過ぎ、分岐の伏拝岳で休憩し眺望を刻み込む。カメラを持つ登山者に固有種のチョウカイフスマを尋ねられたが我々も見なかった(帰宅後御室裏の記述認知)。
河原宿方面と記載された立派な看板に従い、コバイケイソウや白山シャクナゲ、ミヤマキンポウゲなどが咲く急坂を心字雪呼称の大きな雪渓目指して下る。今回初めてアイゼンを付け雪の感触を楽しみながら下るがちっとも涼しくない。1時間程かけて下り切り、雪渓下から流れ出してくる綺麗な水を心より味わう。昨日終盤からの水課題が一気に解消した瞬間である。
河原宿で昨日のルートに合流し、見晴しの良い笹の八丁坂を下る。樹林帯に入り石伝いに流れにそって下るとやがて滝ノ小屋に着く。小屋からの頂上部には昨日と違ってガスが掛かっていた。それから15分程で駐車場についた。
帰りも往路と同じ道を交代で運転し那須界隈で強い雨にあったものの、問題もなくほぼ予定通り帰着する事が出来た。
私にとって鳥海山は、いつか登ってみたいと思ってきた憧れの山であったが、ここまできてしまった。今回お蔭様で達成できたことは無上の喜びである。 (須藤俊記)
上:チングルマ群生 下:イワブクロも地味だが綺麗だ