埼玉県熊谷市の山岳会 海外トレッキング、登山、山スキーなど幅広く活動しています。
関東
【その他】両神山辺見尾根踏査(事前調査)
両神山辺見尾根踏査(事前調査)
山域山名:両神山辺見尾根
期日:2021年8月3日
参加者:橋本義彦
上:稜線から日向大谷を望む 下:稜線の様子
行動記録:
熊谷5:25=自家用車=両神集人P7:20-薄川渡渉入山地点7:30-1313mピーク東の尾根稜線合流地点10:30-1313mピーク10:50-辺見岳11:30-キワダ平12:20/12:30-エビズルの頭1351m12:40-三笠山13:00-1418mピーク13:20-清滝への鞍部13:30-清滝小屋13:50/14:10-日向大谷口-16:00-P16:10=熊谷18:20
この踏査(事前調査)は埼玉の山旅おすすめルートに関係して企画された両神山主要ルート踏査の一つである辺見尾根踏査の事前調査として担当の橋本が行ったものです。
<天気晴れ>天気予報は晴れで私の都合が合い、以前から実施予定の両神山辺見尾根の踏査を実施した。このルートはバリエーションルートで登山地図にも載っていない。地形図とグーグルアースで、地形と植生などをチェックし、ルートを考えた。予定では、辺見尾根稜線の支尾根を日向大谷の南側から登り、稜線まで登った後は辺見尾根を両神山に向かい尾根を西に登るルートである。
道路から薄川に下り、水量の少ない川を越え、急傾斜の尾根を登る。広葉樹の林で、泥に落ち葉が少し積もった場所だ。斜面を見ると踏み跡らしき「道」が見える。足跡の主は足跡の形から鹿だ。斜面に這いつくばるように登る。倒木や大岩は邪魔になるほどではない。一気に汗が吹き出す。標高差200mほど登り、やや斜度が緩くなるが再度、急斜面が続く。標高1000m位になると林越しに左右の谷や尾根が見える。樹種もツガなどの常緑針葉樹も混じってきた。。樹皮が動物にかじられていたり、シャラ(ナツツバキ)が花を地表に落としていたり人の手が入っていない様子だ。先日の激しい雷雨で土が流され木の細根がたわしのように出ていて木の根が土を掴んでいるのが分かる。稜線まであと標高差200mまでのルート上には大岩、岩場があり、少しある踏み跡を参考にルートを決める。大岩に取り付く無理なルートを取らずに右左にずらすと木は生えているし、岩や木の根も利用できるのでそれほど危険とは思われない。木は枯れてる、石はぐらついている物もあるので注意する。稜線に合流しやれやれと思う。支尾根も標高差700mを登るのに3時間もかかってしまった。西に延びる稜線は岩のやせ尾根だが背丈が高くない針葉樹が密に生えている。その木の間から尾根を確認し、GPSでも方向を確認し方向を西に変えて進む。これからの稜線はアップダウンも50m前後以下なのでと割合楽であると予想していたが、現実は違っていた。稜線上は桧やツガ、広葉樹もたくさん生えている。数mの大岩があって避けて通る。進んで行くと最後は岩場になり、細い木々を掴んでは安心して下りられないような場所が4か所ほどあり、ロープで懸垂下降をする。登る場所から見て10mも岩壁がある場所は踏み跡を参考に岩の右か左に回り込んで安全に進むことができた。稜線の南側に鹿よけネットが張ってある。その1か所では、雄の鹿が角をネットに絡ませて外せなくなってもがいていた。また、山頂付近にいた鹿が人に気付いて、斜度35度位の斜面を走って逃げ去った。その運動能力には驚いた。この山には至る所に鹿の足跡、鹿の道があり糞が落ちている。木々の間から右と左の谷を望むことができ、右には登山口の両神山荘が、左には白井差の山中さん宅の赤い屋根が見える。この尾根には人の気配はない。動物には会う。鹿とリスに会い、マムシにも会った。マムシは長さ50cmほどで、先に気付き逃げ出した。それにしても標高1300mの尾根にマムシの獲物がいるのかと心配になる。岩場にピンクの花が2株咲いている。オオビランジか。1か所特に厳しい岩場があった。懸垂下降で岩場を下り、さらに鞍部から下りるのに支点の樹木なく、慎重に下り、岩の割れ目を登って大岩の南側をトラバースして、次の鞍部へと進んだ。岩場は多く、硬いチャート質だ。きれいに地層が見える岩があり、確かにこの岩達は、太平洋の海底でできたのかと思った。キワダ平で休憩し、水分をとり、お握りを食べる。この尾根の山名は登山地図には載っているが、トラバースのせいかそれらしき標識も道標が見当たらない。予定よりも時間がかかっているので短縮のルートを考える。1418mのピークから下った地点一位ガタワから清滝小屋に下りることにした。1418mのピークには立派な石像3体が安置されていた。信仰の山という雰囲気だ。真新しいお札も奉納されている。こうした石像を運んでくるとすれば最短のルートは清滝小屋なので、廃道はあるかもしれないと考えた。一位ガタワの鞍部からは予想したとおり、廃道があった。この鞍部から山頂に通じる道と白井差方面に抜ける道はトラロープが張られ通行禁止・廃道となっていた。標高差100m20分で清滝小屋に着いた。50年ほど前の私が高校生の時秋に両神山に登ったことを思い出した。そしてうろ覚えで清滝小屋から東の尾根経由で山頂に至る道があったことを思い出した。ここで一休みして下山した。
上:シャラ 下:稜線には大岩が何か所もある
日向大谷までは薄川の源流渓谷沿いに下る道で急だが道標もよく整備されていた。会所から分岐して登る七滝沢コースは崖崩れのため通行禁止となっていた。また、以前この登山道で沢まで滑落した死亡事故があり、「滑落注意」の看板と、谷側に木杭とトラロープを張った箇所と、山側に太いロープを張った箇所があり、過去に事故があった場所かと思われた。いずれにしても、このコースも谷側に急斜面があり沢まで何もない場所がたくさんあり、そのすべてにロープを張るのも手間、費用、景観と考えると難しいと思われる。
<追記>今回のルートで気になったことがある。森林内の下草が見当たらないのだ。また、灌木もアセビ以外のツツジなど無かった。クズ、フジ、アケビなどの蔓性の植物も無い。クモ、チョウなどの昆虫、野鳥もほとんど見かけなかった。シダ類も無かった。予想するに、鹿が草、灌木、蔓性植物をほとんど食べつくし、それに食物連鎖で生きている昆虫等もいなくなったのではないだろうか。
岩場の花は鹿の食害から免れる ビランジ