厳冬期の硫黄岳は、厳しかった
横岳西の大岩峰(大同心・小同心)
山域山名:八ヶ岳硫黄岳(2760m)
期日:2024年12月20日21日
参加者:L木村 駒崎 橋本
行動記録:20日 熊谷5:00=関越道・圏央道・中央道=美濃戸口8:30/9:00-美濃戸山荘10:00-南沢-行者小屋13:05/13:35-中山展望台13:50-赤岳鉱泉14:35-赤岳鉱泉泊 21日 赤岳鉱泉7:30-硫黄岳9:50-赤岳鉱泉11:30/45-北沢-美濃戸山荘13:30-美濃戸口14:45=往路と同じ=熊谷17:00
20日<天気、晴れ>今日は天気が良いとの予報に期待して登山口を目指す。関越道、圏央道では、関東平野の西の山脈を見ながら、八王子JCからは左右の山脈を見ながら進む。途中で、左に時々富士山を望む。甲府盆地に出ると南アルプスや、秩父の山脈を見ながら進み、今日、行く八ヶ岳が次第に近づく。諏訪南ICを下り、20分ほどでカラマツ林に囲まれた美濃戸口に着く。付近には別荘なども点在する。ここで装備を付け、出発する。美濃戸山荘までは、緩斜面でカラマツ林や雑木林の中を歩く。車道は奥まで続き、登山道に平行している。雪はうっすらと積もっている程だが、日陰の雪は多い。斜度は緩く、さほど汗もかかないが、体が温めまる程度で、美濃戸山荘に着く。ここで休憩。沢に人工の氷柱が作ってある。ここまでは一般車も入れるので、駐車場には車が駐車している。アイゼンを付ける。少し歩いて、南沢登山道の入口があり、こちらに進む。積雪量も増す。登山道に入ると、ホテイランの案内板がある。亜高山帯の薄ぐらい暗い林床に生えるランだが、開花時期でないので印だけが雪の上に出ている。この辺からは落葉樹は無く、シラビソなどの針葉常緑樹の木々が密に生える亜高山帯の樹林で、この中や、空の開けた沢筋を登る。指先が次第に凍える。登るにつれ気温が下がってきた。沢を何回も横切る。沢には雪の綿帽子をかぶった岩と沢水の凍り付いた氷が沢音の中に佇む。沢に架かる橋は小さいながらもしっかりしていて安心した渡れる。雪は登るにつれ増える。道のトレースはしっかりついていて安心してそこを辿れる。平日のせいか、すれ違う人、追い越す人もいない。沢水も無くなり、空の開けた道に出て、見上げると大同心の岩峰が出てきた。さらに進むと東側の岩峰の稜線全体が見える。そして雪を被った黒い森を抜け、無人の行者小屋に着いた。南に阿弥陀岳、中岳、赤岳がはっきりと見える。東には、赤岳から北に続く横岳、そこに続くいくつもの岩峰が聳え立つ。
数人の登山者のいる行者小屋でゆっくりと休憩をとった後、赤岳鉱泉に向かう。中山乗越から、中山展望台に立ち寄る。行者小屋よりも周囲の山脈がさらによく望める。ここからは下り道で、アイゼンがよく効き快適に宿に向かう。宿の横では、鹿が出迎えてくれた。
赤岳鉱泉では、夕食の6時までゆっくり過ごす。同じ部屋の方が茨城労山の方と分かり、タケノコ狩り、海外登山などの話題で盛り上がる。パキスタンの男性とガイドも同室となり、この2人はアイスクライミングに来たという。6時から、山小屋の夕食では珍しくステーキが出て、ゆっくりと味わった。
21日<天気、曇、風雪>天気予報どおり、曇りだ。小屋周辺に風はあまりない。風雪が午後から強くなる予報で赤岳の予定を、硫黄岳に変更した。硫黄岳は、赤岳より140m低い。小屋横から道に入る。鬱蒼と繁る薄暗い森の中を進む。雪も多いがトレースはしっかりしている。小沢を2つほど横切る。水がちょろちょろと流れている。その後、赤岩の頭目指して、傾斜がきつくなり、道は右に左に折れながら高度を上げていく。針葉樹の森は濃く、暗い。時々、落葉樹もあり、そんな場所からは雪雲の下に、阿弥陀岳や、諏訪方面の街を見ることもできる。白黒の水墨画のような色のない景色だ。最近読んだ「登山と身体の科学」で「太ももの大腿四頭筋に力を入れて登る時に息を吐く方法が楽」とある。呼吸と歩行を関係づけて歩いていなかったので、これを意識して、登る。確かに、楽だ。肺に酸素の多い空気が頻繁に供給されるので、血中酸素濃度が高くなるせいかなどと考えることもできた。10kgほどのザックを背負い風の弱い休憩地点まで、若い2人にあまり遅れることなく歩くことができた。見上げる尾根には、強風がゴーと吹くが、休んだ場所は風が当たらなかった。尾根に上がると稜線で風が強いぞと、覚悟して登り続ける。赤岩の頭の鞍部に出ると、そこに木々は無く、吹き曝しの稜線で、一気に細かい雪片の混じった強風が吹きつけてきた。遠くの赤岳の山頂は既に雪雲の中だ。右にある岩山に向かって緩い氷雪の道を登る。道の脇を見れば、ハイマツもガンコウランも、シャクナゲも凍り付いている。高山の厳しい寒さに耐えている。岩稜帯は大岩の間を抜けて行く。指先がこの寒風で冷え、痛くなっている。八ヶ岳は凍傷も多いと山小屋の掲示で見たことを思い出す。岩の間を抜けると道標があり、平らな岩屑面が広がる。硫黄岳に着いた。寒風の中、手袋の凍える手でやっと何枚か写真を撮り下る。冬の厳しい硫黄岳には、登る人も少なく、出会ったのは数人程度だった。
登る時に休んだのと同じ場所で休む。そこは風も無く、腰を下ろしてゆっくりと飲むカフェラテの温かさが体も気持ちも温めてくれた。この後、登った道をひたすら下る。途中に、倒木が何本もあり、くぐったり、跨いだりしながら下る。倒木をどうにかしたいが、埼玉から来るには遠すぎる・・・などと考える。
赤岳鉱泉に着くと、登山者がやけに多い。テント張りの準備をしているグループもいる。この小屋の近くに8mほどの人口氷壁が作られている。登った形跡はない。休んでいる時間にも次々と登山者が登ってくる。ザックを見れば背中には、アイスクライミング用アックスを括り付けている。あ
休憩後、登りと違う北沢を下る。沢や樹林は南沢と同じようだ。ただ、沢の底は赤茶けている。火山由来の成分が沈着しているようだ。沢を渡る橋も整備されている。この下りのルートでも、幾つもの登りの登山者のグループとすれ違う。後日、赤岳鉱泉のサイトで知ったが、この日が、アイスウォール解禁日となっていた。車道に出る少し手前で、アイゼンを岩に引っ掛け転ぶ。どこも負傷せず、歩けて一安心した。橋を渡って車道に出た。後は車道を辿って、美濃戸山荘まで、順調に下る。ここで一休み。傾斜の緩くなった山道を下り、ほぼ予定とおり美濃戸口に着いた。
美濃戸口で八ヶ岳山荘の駐車料金サービスのコーヒーを、薪ストーブで暖まりながらいただく。体が外からも、中からも暖まり、厳しい冬山に登った充実感を感じることができた。後は、埼玉に帰るだけとなった。中央道の小淵沢から甲府位までは、左手に八ヶ岳、右手に鳳凰三山に繋がる山々が見えた。
(橋本記)