【ピークハント、ハイキング】タスマニア島クレイドル山他

投稿日時: 02/02 hasimoto

自然豊かなタスマニア島の山に登り、森やブッシュを歩き、滝を巡り、海岸を歩く

 

上:ドブ湖の向こうに聳えるクレイドル山 中:尾根から見るドブ湖 下:山頂付近に咲き誇る花々

タスマニア島(オーストラリア)山行(個人山行)

山域山名:オーストラリア タスマニア島クレイドル山他

期日:2025年1月4日から1月12日

参加者:橋本義彦

行動記録 ※時間は現地時間(日本時間+2時間)

2025年1月5日 天気:晴れ

ホバート空港13:40=レンタカー店14:30=ホバート市内買物15:50=スワンリバーキャンプサイト(CSと略す)18:40 同地泊

 現地の1日目。メジャーでないレンタカー店を選んだので、空港に迎えに来てもらうのにショートメールで連絡する。どうにか通じ、30歳ほどの大きな体つきの青年が迎えにくる。小さな事務所で手続きする。車はトヨタのヤリスクロス。日本のようなナビは無く、USB端子も無く、困った様子に、シガーライターに差し込んでUSB電源を取る器具を貸してくれた。これでWi-Fi器具とスマホに充電しつつ、グーグルマップで地図を表示して、島内を運転した。ホバート市内では、ガスカートリッジと食料と水を購入し積み込んでフレシネ国立公園を目指した。遅くなりそうなので、途中のキャンプ地を探し、スワンリバーのキャンプ地を見つけた。

上:フレシネNPへの両側には牧草地が広がる 下:スワンリバーキャンプ地

2025年1月6日 天気:晴れ、後曇

日程記録:スワンリバーCS6:30=ワイングラスベイ登山口P-ワイングラスベイLookOut8:50-ワイングラスベイビーチ9:40-ハザードビーチ-登山口P12:20=セントへレンズ近くCS16:30

スワンリバーのテント地から、車で、フレシネ国立公園まで走る。途中、広い薄茶の平らな草地が広がる。針金の柵がしてあるので、所有者はいるらしい。羊が草を食む草地もある。牛のいる草地もある。乾草のロールが点々と転がっている草地もある。北に向かって走って、途中から東に曲がり半島を目指す。20分ほど走ると、海が森越しに見える。海沿いの住宅地があり、フレシネビジターセンターもあり、狭くなった道を、駐車場まで走る。1か所、キャンプ地があり、海隣接なので、寄ってみる。磯浜の海岸で赤っぽい大岩が剥き出ている。

 細い車道のどん詰まりの駐車場に着く。もう何台も駐車している。駐車場には、国立公園の入園料・駐車料の自動販売機がある。(注)タスマニア島の国立公園は、入園パスが必要で、事前購入か、当日購入となる。車1台、2か月のパスで1万円ほど。1日だと2000円程度。事前購入のパークスパスを、ダッシュボードに掲示しておく。駐車場には、トイレ、飲料用水道、登山道・フレシネ国立公園の案内板、トレイルの道標などがある。支度して、出発する。東の山を見上げる。赤茶の岩山でアモス山という。ここは往復コースしかないので登らない。ワイングラスベイを通る周回のコースを選んで、そのルートを登り始める。登山者が少ない道を登る。樹木が生えているが、余り高くなく、まばらなので道は明るい。南半球で、日本とは全く違う植生で、灌木に白い花、黄色い花が咲いている。マツの木は共通している。細い葉の木は、ブラシのような花を付けている。こちら南半球の夏を感じる。道端には直径5㍍ほどの赤茶の丸っこい大岩が所々にある。まばらな木々を通して、右側には、数㍍の岩ゴロゴロの山が立ち上がる。それほどきつくない斜度の道を登りきると、鞍部に出て、ここがLook Outで展望台となっていてベンチも ある。天気が良くなり陽射しが出て、そこからは下にワイングラスベイの砂浜、海が見える。その展望台から、砂浜が緩やかにカーブをかいて白く輝いているのを見て、遂に9000kmも離れた南半球の島に来られたと実感する。湾にはボートが何艘か浮かんでいる。2人連れや家族連れが、登ってくるのでHello!と声をかける。息を切らしながらも笑顔だ。

 

上:ワイングラスベイ 下:ハザードビーチ

一休みしてから白い海岸目指して下る。土の入った大きなフレコンバッグが道の脇にある。車の入れない場所なので、ヘリ空輸して、登山道補修に使うのだろう。大きな樹木があるが、葉が少ないせいか、明るい。倒木も片付けてある。足取りも軽く下って行く。林に切れ目があり、そこを抜けると、眩しいほどの白砂の海岸、白く打ち寄せる波、藍色の海、青い空、緑の森が広がる。素晴らしい景色で見とれてしまう。白いカモメが、人懐っこく寄ってくる。砂を手にすると、透明な粒だ。山で見た赤茶けた岩が砕けて、粒子になったのか。一時、景色を堪能して、前に進む。急に、大きな動物が道に出てくる。薄茶色のカンガルー。ウサギに似た顔をしている。近づくと迷惑そうな様子で茂みに入っていった。近くに立派なトイレもあった。ここからは、平坦な道を通り、ハザードビーチを目指す。トカゲ、チョウも出てきて、セミも鳴いている。平坦な道を進むと、シダ植物が群生し、ワラビにそっくりな芽がでている。道の南側に、湿地が広がっている。ここは水のある湿地でイグサに似た草が一面生えている。歩きやすい木道を進み、白い花の灌木の野原を抜け、砂の丘に登ると、ワイングラスベイの反対側のハザードビーチに抜けた。海岸に下りて駐車場方向に向かって歩く。先ほどの砂の丘は5mほどの高さで、途中の砂の層にカキの殻のような貝殻が沢山露出している。日本のとは違い黒い貝殻が多い。500mほど海岸を歩いて、海岸からやや離れた道を辿る。木々は10mほどで疎らなので明るい。雲が多くなり、雨粒が落ちてきたが、直に止んだ。疲れたので、開けた場所で石に座って休む。休んでいると、蚊が寄ってきた。日本の蚊同様、腕、足などに食いつく。パチンパチンと叩いた。それに加え、手が痛痒いので見ると、アリだ。これもやっつけるが、巣穴がすぐ傍にあり沢山のアリが警戒して活発に動き回っていて、危険なアリかも知れないので休憩を終わりにした。灌木に咲いた赤い花、白い花を見ながら歩く。また、ソテツのような幹から束ねた細い葉が出ている木があった。珍しいと思いつつ歩くと、説明板があり「Grass tree」で、人間の靴についた菌で根が腐っていくので、注意を促す表示があった。ほぼ予定の時刻で出発した駐車場に戻れた。出口には、火気の規制の看板があり、焚火禁止とある。沼地の付近の木々の幹が黒く焼けており、山林火災が起きたのだろう。

 この後、ビジターセンターに立ち寄り、「Tasmania’s national parks and reserves 60 Great Short Walks 」を買う。街の小さな食料品店で牛肉などを買う。セントへレンズに行く途中で、Nature World というタスマニア島の動物のミニ動物園を見学する。3$のシニア割引をしてくれた。タスマニアデビル、カンガルー、ハリモグラ等この島の動物に会った。そして、100km以上走ってセントへレンズ近くのキャンプサイトに着き、ここに泊まる。風強く、夜半に起きて空を見上げると、オリオン座が北の空に、南の空には、日本では見られない星座が輝いていた。

2025年1月7日 天気:晴れ

日程記録:CS7:00=Halls Fallハイク8:10-9:00=ランセストン=ダックリーチハイク12:30-15:00=ナラワンタプCS17:00

 前の晩は、小雨と強風があったが、夜半には止んで、穏やかな朝を迎えた。ここは、河口で、森を抜けると河口に出る。赤い嘴のチドリが餌を探している。海の波も穏やかだ。

 今日は、セントへレンズから、北部の中心都市ランセストンを通り、ナラワンタプ国立公園までの移動が中心となる。途中にある、ホールズフォール、ランセストンのダックリーチのハイキングができればと思い出発する。

 キャンプ場からセントへレンズまでは直ぐに着き、綺麗な海岸で釣りをしている人と会話する。道はここから西側の山地に入る。住宅地を出ると、道路の制限速度は80kmか100kmで、対向2車線で、カーブも多く、日本の高速道路に慣れている者にとっては、スリルがある。ただし、すれ違う車はほとんど無い。丘陵地には、牧場があり、暖かな陽射しの下で、牛が草を食んでいる。のどかな明るい景色が続く。

 森の中に入り、ホールズフォールの案内板があり、1時間もかからないので滝まで行くことにする。高木の森の下には、大きなシダが茂る。ヘゴのような大きなシダもある。シダが茂る所は暗い。難しい場所もなく、下り道になる。すぐに川に着く。2筋の滝が朝日を反射して白い。滝は日本と同じようだが、周りの植物はシダが多い。水は植物が多いせいか、少し茶色だ。上流にも行き、淵を見る。

帰りには、小鳥に会う。目の周りが白く、日本のメジロにそっくりだ。

 もう1か所、道路沿いの「雨林ウォーク」、往復10分を歩く。大木、高木、数㍍の高さのシダの森。説明板には、なぜここに雨林ができたのか説明してある。「ゴンドワナ大陸から分かれて、この地に移動してきた」とあり、大陸移動説がこの地にまで及んでいること知る。幾つもの峠を越えるが道端にはピンクのリンドウのような花、黄色の花が咲く。

 小さな街を何カ所か通り抜け、農村地帯を抜け、ランセストンに着く。ここは北部では最大の都市だ。住宅地、店、大きなビル、教会などが立ち並び、車の数も多く人々も行きかう。この街で、ガソリン給油をする。ガソリンは3種類あり、真ん中の表示を選択したら、日本でのレギュラーとハイオクの中間位の品質のガソリンらしく、ノーマルのガソリンよりも高かった。満タンになって、給油が止まるかと心配したが、しっかり止まり一安心。店内で給油ノズルのナンバーを伝え、カードで支払いが終わった。1㍑200円ほどで、日本より高い。スーパーでは食料(牛乳、ソーセージ、ネクタリン、チーズ)を買い、近くの住宅地を見学。起伏のある住宅地で、庭にはバラやアガパンサスが咲き、夏を感じさせられる。。ナビの案内でダックリーチの駐車場へ行く。スーパーから5分ほどの場所で直ぐに着く。大変な混雑。車も人も一杯。

 

上:ホールズ滝 下:カタラクトゴルジュ

ここはカタラクトゴルジュの出口で、レストハウス、プール、リフト、ゴルジュ出口の渕を周る橋などがあり市民の憩いの場所となっている。川沿いのゴルジュ沿いのハイキング道を旧発電所まで歩くことにした。入口近くの岩に花のような結晶が出ている。説明板にはゼオライト(沸石)でドレライトがアルミ、ケイ酸鉱物が水和化したとある。サッグという植物、それに付く虫の説明板もあり、虫の味はアーモンド、ピーナッツの味がするとある。日本でのカミキリ虫の幼虫がこれにあたるかと説明を読んでしまう。川の渓谷の両岸は大岩で立ち上がっている。水量は少ない。最近、雨が降っていないようで地面も乾いていて、夏らしく暑くなった。歩いて行くと、30㎝ほどのトカゲが出てきて驚く。図鑑によるとブロッチドブルータング。川は流れもあり、滝もある。岩が硬く大きな岩になっているようだ。乾いた地面でも赤い花、ワスレナグサに似た花などが道端に咲く。発電所は、対岸にあり吊橋を渡る。既に運用が終わり建物内は博物館として見学ができるようになっている。太い金属の導水管、発電機などが残っている。作るために対岸との索道の設置と工事、建物用資材の運搬の歴史の説明板が設置されている。水量豊富で、ロンセストンの街に豊富な電気を供給していたという。

帰りは同じ道を辿る。

 ロンセストンからナラワンタプ国立公園までは、車で移動する。ティマ―川左岸を西北に向かう。途中、高台から景色を眺める。のどかな景色が広がる。川といっても幅が2kmほどの所もあり、湾のようだ。途中に交通規制の場所があり、川沿いの道路に下りて走る。そのまま目的地に行けると思ったのが悪かった。結果的に、途中、ナビは砂利道の山道を案内し17kmも走ることになった。通る車は1台も無く、ここで何かあったらどうなるかと思いながら慎重に運転し、メインの道路に出た時は本当に安堵した。そこからナラワンタプ国立公園は数㎞だった。直ぐに海岸に行き、景色を眺める。晴れて眩しい海岸、バス海峡の海が広がっていた。キャンプ地はビジターセンター横にあり、閉館時間後なので料金は支払機で払うことになっていた。支払機が故障中なので、現金で払う。キャンプ地には、キャンピングカーが多いがテント泊の人もいる。夕食の準備をしているとキャンプ地に数匹のカンガルーが現れて草を食べている。人を怖がらず、逃げもしない。夕食後、アーチャーズノブのハイキング道を半分ぐらい歩く。バードハイド(鳥の観察小屋)からは沼地の水鳥が間近で見られた。

 

2025年1月8日 天気:晴れ

日程記録:CS5:45=クレイドルマウンテンビジターセンター7:20=シャトルバス8:40=ドブ湖バス停8:50-ドブ湖西岸道-クレイドル山頂12:10/12:30-マリオンズ展望台14:10-ドブ湖バス停=ビジターセンター16:50=バーバリ湖CS19:40

前日に、ナビでクレイドル山ビジターセンターへのルートを入れると距離100kmで所要時間は1:30と出た。8時からシャトルバス運行なので、余裕みて5:30には出る予定だったが、5:30まで寝てしまった。テントの片付けなしの車中泊としたので、トイレを済ませ、急いで出発。キャンプ場出口付近の草原をカンガルーが数匹ぴょんぴょん跳ねる。さすがタスマニア。運転しながら朝食を食べる。キャン地を出るとすぐに100kmの制限速度の標識。起きて直ぐ、狭い道でこの速さはきつい。山に入るまでは、枯れた草地もある。水やりの大型スプリンクラーが水を散布している畑、ジャガイモ畑、緑の野菜畑、リンゴ畑などが広がり、朝日に照らされ綺麗だ。途中の街から、山に入る。そこからは西に緑濃い森の中を走る。道狭く、カーブも多い。広い道路を横切ってからは、最後の道になり、グングン高度を上げる。ビジターセンターの表示で駐車場に入る。駐車場にはもう、20台ほどの車が停まっている。

ビジターセンターは開始が8時で、入口に10人位が待っている。駐車場横に券売機があるが、公園のパスしか買えない。シャトルバスは事務所での購入となる。登山装備を整え、チケットの列に並ぶ。事務所オープンで40人ほどが、先にチケットを買い、ほぼ満員で8:20に出発する。私が乗るバスもほぼ満員で、出発は8:40になってしまった。幾つかのバス停に止まり、何人か下車する。バスルート沿いにもハイキング道がありそこを歩くらしい。ドブ湖のバス停で全員下りる。ここにはトイレや簡単な休憩舎がある。運転手が最後のバスは「セブンオクロック」と話しており、最終バスは午後7時、それまでに、クレイドル山に登り、バス停に戻らなければならない。すぐに出発する。

 天気は晴れ、湖の向こうに急峻なクレイドル山が聳える。今日はあそこの山頂までと、登る気持ちが高まる。湖の横の平坦な道を進むが、白い花、黄色いやピンクの草花などが咲き、今の時期に白いボタンはないが、ボタングラスが生える。西側の山の頂上付近は岩が剥きだしだが、その下は木々が密に生えている。道はよく整備され歩きやすい。標識もよく整備されて分かりやすい。木道には滑り止めの金網が貼ってあり、これは日本でも取り入れたいものだと思った。尾根を越し、大きな木の森を抜け、湖岸の狭い道を過ぎて山に登るレイクウィルクストラックに入る。ここからは急な登りになる。ドブ湖に近い場所は、道の傍の石作りの階段があるが、その後は、そのままの泥、石、木の根の道になる。小沢を過ぎ、ウィルクス湖に着く。周りを木々に囲まれた静かな湖だ。この後は急な岩場になる。この付近からは花が増える。長さ数㎝の筒状の赤い花(クリスマス・ベルズ)、灌木だが曼殊沙華のような花(タスマニアワラタ)、アセビを上に向けたような花、白い穂状の花、桃色の房状の花(スワンプハニーミーテル)などが咲く。東の尾根からきた道と合流し、平坦な道を西に進む。湖付近よりもさらに、クレイドル山は間近に迫り大きい。オーバーランドトラックからクレイドル山に登る道に進む。この付近は標高1400mほどだが、大きな木は無くなり、灌木、草地、苔地となり、高山の雰囲気となる。多肉植物のような小さな植物に小さな白い花がついている。パンダニ、とげとげの灌木も茂る。キッチンハット(避難小屋)の近くで休む。この付近からは山頂に向かう尾根道を登ってきた登山者が増える。

   

 

上:クリスマスベルズ 中: スワンプハニーミーテル 下:スコパリア

シャトルバス最終便に頂上を往復しても十分、間に合うことが分かり、ここまで来たのだからと登る決心をする。斜度がきつくなり、ゆっくり登る。現地の人に追い抜かれ、追い越ししながら登る。登るにつれクレーター湖方面の見晴らしが開ける。石の多い道は、最終のルートでは1、2mの大岩が崩れ、積み重なった道となる。ルートには、案内のポールがついていて分かりやすい。岩が硬く、節理面で割れて崩れた地形のようだ。落ちないように慎重に進む。尾根に1回出て、また下る。そこには白い房の花が岩間にたくさん咲いていて、1500mの標高ながら高山にきた雰囲気だ。横に進んでまた、10mほどの岩場を登ると平坦な場所になり、石積みの表示板があり、頂上に着いたことが分かった。晴天、視界良好で周りの景色を、清々しい空気を吸い込みながら楽しむ。標高は1545m、日本の山に較べればそれほど高いわけではないが、9,000km離れた南の島の山は、心理的に遠く、険しい山で、自力でここまで来て、自力で山頂まで達したことに十分な達成感があった。また、クレイドル山は柱状節理が取り残されたような山で周囲を遮る山が無く、遠くまで見通せる。山頂からの高度感は素晴らしい。周囲の山々には、氷河が造ったと言われる湖沼が数多く点在する。山の西にはバーンブルッフ山標高1559mが聳える。北にはオーバーランドトラックの平坦な地形が見える。その横にドブ湖、東や西には、なだらかな山々が連なっている。クレイドル山頂付近は岩が多いが、その間の土のある場所には白いタンポポのような花、房状の花(スワンプ・メラレウカ)などが咲く。トカゲ(スノウ・スキンク)も出てきた。数組のグループが休憩しているので、近くで昼食休憩にする。すぐ前に白いウサギギクのような花が咲いている。

 下山のルートには、マリオンズ展望台を通り、リラ湖を通り、ローニイクリークのバス停まで歩こうかと考える。大岩地帯を慎重に下る。まだ、登ってくる人がいて、“Hi,Hallo”と挨拶を交わす。挨拶を交わした方が、私が日本人だと気付いて、「日本の方ですか?」と突然日本語モードになる。「広島に仕事で3年間いました。」と話してくれ、今は、メルボルンにいるなどと話した。心が温まり、オーストラリアへの親近感が高まった。すれ違う皆が、登りで、息が荒く、汗もかき、疲れているようだが、笑顔で挨拶、会釈をしてくれる。そういえば、日本でも、山に登るほとんどの人は、笑顔だ。登山、ハイキングは人を明るく、楽しくさせる素晴らしいスポーツだと思った。それは国が違っても、人間に共通だと思った。同じ時に、同じ山に登り、同じ景色を見て、花を見て、同じような気持ちになり、それを共有できる。下りながら植物を見る。標高1400mほどだが、森林限界を越え灌木地帯となっている。ツツジは無いが同じ位の灌木が多く花を付けている。苔も生えている。オーバーランドトラックに道は合流し、キッチンハット(避難小屋)に着く。少し休んで、マリオン展望台を目指す。やや登りの道で灌木も無く、丈の低い草が茂る。敷石の道もある。高層湿原のような池もある。振り返れば岩峰のクレイドル山が聳える。岩の間に、白い花が咲く。進むにつれ、左手にクレーター湖が見えてくる。その先に数人が休んでおり、ここのマリオン展望台で休む。ここからは、右にドブ湖、左にクレーター湖が見え、クレイドル山も良く見える。ビジターセンター方面も見える。さらに、急傾斜の岩場を下り、クレーター湖のへりに来てから右に曲がる。黄色い花や赤い実の植物も増えてきた。また、道の横の岩に氷河の擦過痕を見つけた。今の景色を見ると信じられないが、確かに1万年ほど前、分厚い氷河があり、流れる氷河の下でこの岩が削られた。このような氷河の擦過痕は谷川岳石黒尾根にもあり、日本と共通の気候だったのだろう。でも、今あるこの植物は、その時代をどう生き延びたのか、種で生き延びたのか、謎が残る。ウォンバットプールの辺りで、先行者が、薮の方の何かを見ている。一緒に見ると薄茶の小動物がごそごそと藪の中に入っていった。リラ湖手前にはボタングラスの草原が広がる。湖の横を抜け、進んでいくと急に人が増え、ドブ湖の登山口に着いた。ローニ-クリークに行くルートに上手く入れなかったようで、少し残念だった。最終バス時刻までは余裕のある時刻の下山だったが、天気がよく、景色よく、花もたくさん見られ、体調もよく、事故もなく、本当に充実し、大満足の登山となった。

 シャトルバスには、山を楽しんだ人々で一杯。ビジターセンターではカフェに寄り飲物・食べ物を求め、外で食べる人もおり、私も1本4.5$のアイスバーを求めて熱い体に入れた。ここの前にはモニュメントもあり、タスマニア世界自然遺産の解説板などがある。ここから、150kmほどの距離を走り、クィーンズタウンを抜け、バーバリー湖キャンプサイトに着き、テント泊をした。

 

2025年1月9日 天気:晴れ

日程記録:バーバリー湖CS7:00=セントクレア湖VC8:30/8:45-ルフス山11:45-シャドウレイク13:30-セントクレア湖VC 15:45=ハミルトンCS18:30

 キャンプサイトは広々とした草地で、寝心地は良く、熟睡できた。泊まったのは数組だった。湖の辺りで、静かなキャンプサイトだった。朝食を済ませ、セントクレア湖に向かう。途中集落なく、ネルソン滝、ドナギーズヒルは、表示板あるが通過する。走る車は無く、広い草原の中の道を東に向かう。A10の幹線道路を左に曲がり数㎞でセントクレア湖ビジターセンターに着いた。天気も良い。まず、ビジターセンターの中に入ってスタッフと話す。地図、パンフなどあるか尋ねると、どこからきたのか逆に尋ねられ「Japan」と言うと「私、日本人です。」と答えがあり、ここで働いているのだという。事前の準備で計画していたラフス山標高1416mの周回コースを薦めて、コースの概略と景色が良い事、今日の天気についても「晴れる予報なので大丈夫」と言ってくれた。時間的にも大丈夫そうなので登ることにした。そこにはシャワーが使えるとある。直ぐに出発した。登山口に、オーバーランドトラックの看板がある。ここは、昨日登った、クレイドル山からのオーバーランドトラックの到着地なのだ。

 

 

湖の近くの森を進み、西の山に登るルートを辿る。入口にはラフス山周回は7時間とある。緩い傾斜の森の中を、進む。ユーカリの木の森で明るい。灌木もあり赤い実が目立つ。倒木もあるが片付けられている。太さ3mもの倒木の根には驚く。大きな鳴き声の鳥も現れる。現地の若者2人連れに抜かれる。シャドウ湖への分岐から斜度が増し、木々も小さくなる。その少し上で小休憩。そこからラフス山の山頂と尾根が見える。やや平坦な草地、低木地の端を、尾根目指して進む。尾根に登ると、木々が無くなり、草地となる。景色が一気に広がる。セントクレア湖も反対側の湖沼も見える。下りの時に通るフォーゴットン湖、シャドウ湖も見える。実に広々とした景色だ。足元を見れば岩ごつごつの地面だが草花が咲き、苔、地衣類が生えている。標高1300mほどだが、日本の高山の様子で、ピンク、白、黄色の花々が咲きほこる。昨日のクレイドル山よりも草花は多い。北の方を見れば、クレイドル山に続く山脈がうねうねと続く。急いで登り、疲れも出てきたので、岩に座って昼食休憩とする。登山者は一人もおらず、絶景を独り占めで楽しむ。適度の気温と陽射しが気持ちよい。

休憩後、再び歩きだすが、群生の花、苔のような葉の白い花もなかなか良い。1人で見るだけではもったいない程だ。大きなケルンのある山頂に到達。前に私を追い越した2人連れは岩の上で昼寝をしている。失礼かと思ったが、写真をお願いした。一眼レフのカメラだったが慣れていたようで上手に撮ってくれた。”Thank you so much” そこからは下りになる。天気も安定している。道が歩きやすく整備されている。右の大岩を通り越し谷に入ると次第に樹木が増える。木道が整備された辺りの斜面にはパイナップルに似たパンダニが群生している。緯度が高く、標高の高い場所にこうした植物が群生しているのは不思議な感じがする。戦場ヶ原のような平原の草原を抜けシャドウ湖に向かう。日も強く暑いくなってきた。地面には動物に掘られた穴があり、糞が転がる。シャドウ湖で一休み。この日は、下山するまで、山頂で追い越した2人連れにしか会わなかった。湖は静かで、周囲の森は緑が濃かった。下山口に向かい下る。この付近も登った付近と同様、ユーカリの巨木がそそり立つ。まだかまだかと思いつつ下り続けるとやっと沢の瀬音が聞こえ、下山口が近づいたことが分かり、歩くスピードを緩めた。最後はその沢を橋で渡り、ビジターセンターへの表示板を確認、到着時刻も確認した。

 変化に富んだルートで、良かった。特に稜線の草花や、周囲の景色は素晴らしかった。ビジターセンターのシャワー時間は終わっており、これは少し残念だった。湖に行くと水面は静かに向こうの山々を映している。氷河期に造られた湖で水深はオーストラリア最深167mだという。ほてった足を冷やした。この後、ハミルトンまで150kmほど走り続ける。Ouseという小さな街で食料を少し買う。ハミルトンはその隣街で、ここのキャンプ地に泊まることにした。ここまでの道中は、半分位は丘陵地、湖沼などで森の中、その後は牧草地になり、羊や牛が草を食むのどかな風景が広がっていた。途中に集落はない。キャンプ地の横に小川が流れていて、Platypus(カモノハシ)の看板があり生息しているようだ。静かな街で、1軒の小さなホテル&カフェで音楽が流れている。このキャンプ場の施設は最近できたようで真新しい。トイレ、シャワー設備があり、5分1$の温水シャワーで、久々に汗を流す。

2025年1月10日 天気:晴れ

日程記録

CS7:20=マウントフィールドVC9:20/9:30-スリーフォールズハイク9:30-11:45=

ホバート市内買物(本、土産)15:00/16:00=ゴードンCS18:30

 今日はマウントフィールド国立公園に行き、3つの滝を巡るハイキングに行く予定だ。朝食を簡単に済ませ、昨日来た道を数キロ引き返し西に進む。湖があり、対岸の木々、家、牧草地、山を映す。日本では見ない景色に見とれる。波が無く鏡のようだ。池にカモが泳ぎ、枯木でウが休む。ここから南に走る。途中からマウントフィールド国立公園に曲がるはずだと思いつつ、道が良いので走り続ける。田舎の街にガソリンスタンドがあり、10㍑ガソリンを入れる。こんな田舎街でもカードが使えた。目的地に向かっていないのではとグーグルマップで確認すると、既に曲がるべき交差点は10km以上過ぎていた。引き返して、今度は交差点を曲がることができた。間違えた理由はよく分からないが、曲がる交差点近くに橋があり、住宅もあり、何かに気を取られ、案内板が見えなかったのかも知れない。無事、マウントフィールド国立公園ビジターセンターに到着。車は混んでいる。隣接のキャンプ地も賑わっている。

 滝までの道は、ビジターセンターからは、車椅子で行けるほどの幅があり舗装されている。軽装の人も多い。やはりブルーガムの大木が生え、シダの仲間が茂っている。10分ほどでラッフルフォール着。地層が水平に広がる、幅広の滝で、その上から幾筋もの水流が落ちて白く光る。幅広の滝も良い。次の滝はこの滝の上流にある。舗装され手摺のある道を登って行く。道の最後に滝展望台があり、ホースシューフォールだ。「ホースシュー」とは馬の蹄鉄のことを言い、二筋の滝が合わさる形は、U字形で確かに蹄鉄形である。ここまでは見学客多く、アジア系の方もいる。ここからは、Tall Trees の森の道を選ぶ。巨木は ユーカリの木で根元の直径2-3mもあり垂直に空に向かって幹が伸びている。この樹木は何百年も生き、100mをこえることもあるという。立木も倒木も巨木で、見上げているが木の頂上が見えない。日本でも杉、桧の巨木があるがそれを越すほどの巨木だ。

 車道に出て、次の滝を目指す。シダの林を抜けて谷筋に下りて行く。入口には赤い看板があり、倒木の危険性があり、災害の重大な危険地域との表示がある。木々の倒木のためで、いつでもその危険があり、風の強い日は更に危険が増すとある。避けるには立ち入らないことと警告してある。確かに森林、街路樹の多い日本でも枯木が倒れ、死亡事故もおきている。瀬音が聞こえ、レディバロンフォールに着く。この滝も横水平地層の上から水の落ちる滝だった。誰もいない展望台で静かに滝を眺め、水音を聴く。やや暗い森の中の沢沿いを歩く。沢に下り川の中の石を返すとカゲロウの幼虫が動いていた。魚やトンボの類は見当たらない。最後に階段を登り、ビジターセンターに戻ることができた。

 ビジターセンターのデイユース広場で休憩、昼食にする。今回のキャンプ旅では、もう少し南部の国立公園にも行きたかったが、ホバートからもかなり遠いので、ホバートで買い物して、ブルニー島対岸のゴードンまで行って、泊り、こちらの最終日は、ホバート市内のロイヤル植物園を訪れることにした。ホバート市内に近づくと交通量も増え、住宅、店舗などが立ち並ぶ。サラマンカプレイスの本屋で、動物の本とユーカリ類のリーフレットを買った。この後、ゴードンまで走り、ブルニー島を湾の向こうに見る ゴードン・リクリエーショナル・リザーブに泊まる。時間あり、隣の夫婦連れと会話する。数年前に退職した船長さんで、フィンランドの方。日本のことも話していて、ビューティフルカントリと言っていただいた。

2025年1月11日 天気:晴れ

日程記録:CS6:00 =ロイヤルタスマニアン・ボタニカルガーデン7:00/10:00=レンタカー返却11:30=ホバート空港12:00 ホバート空港18:10発、シドニー空港で乗り換え後、12日5:50に羽田空港着

 キャンプ地からホバート市内に戻る。東の空がバラ色に染まり、徐々に夜が明ける。朝、早いせいか車がほとんど走らない。所々に、野生動物の死骸が転がっている。野生動物が多いから仕方ないのか。

 植物園は、8時開園で、駐車場、近くの遊歩道で待つ。海岸があるが、防波堤も無い。湾で波が穏やか、津波もないのだろう。8時に開園し入る(無料)。植物園はよく整備されている。日本庭園、タスマニアの植物、オーストラリアの植物、針葉樹など見学する。見学終了後、空港近くでガソリンを満タンにしてレンタカーを返却する。レンタカー会社に空港まで送ってもらい今回の山旅は終了した。

※レンタカー会社がウェブサイトでの申込時に料金を支払ったにもかかわらず、受付時にも費用をカードから引き落としていることが帰国後分かり、返金の催促をした。結果的に1週間ほどで返金をしてくれた。