埼玉県熊谷市の山岳会 海外トレッキング、登山、山スキーなど幅広く活動しています。
関東
【沢登り】奥秩父真ノ沢
真の沢沢登り
荒川源流「真ノ沢」の厳しさと魅力を味わう
山域山名:秩父 荒川源流真の沢
期日:2023年9月23日、24日
参加者:橋本 他の会4名 埼玉労山沢人主催
行動記録:22日 寄居22:00=国道140号=道の駅三富2:00 車中仮眠
千丈の滝
23日 道の駅三富6:00=トラウトオン入川7:00-柳避難小屋11:00/11:45-千丈の滝15:40-テント場16:30 同所泊
24日 テント場7:10-荒川源流の碑12:30-甲武信小屋13:00-甲武信ヶ岳往復-甲武信小屋14:00-木賊山14:30-西沢渓谷駐車場18:00
23日<曇、小雨>今回の沢登りは、5名のグループで、2台の車を利用し、1台を道の駅三富に、他の1台を沢登りの登山口の入川の釣場駐車場に置く。入川から、荒川源流の真ノ沢を遡り、甲武信小屋まで登り、木賊山を経て、西沢渓谷に下り、そこに駐車しておいた車を利用して入川の駐車場まで戻り、帰るというルートだ。朝、山梨側から長い雁坂トンネルを抜けると、雨雲が立ちこめ、小雨もぽつぽつとしている。少しは降ると予想する。140号国道から細い道に入り、上流の渓流釣場の駐車場に車を停める。しばらくは、登山道を歩くので沢用具はザックに詰め、普通の登山装備を身に着ける。道は、いわゆるトロッコ道で、森林軌道がまだ残っている。幅は2mほどあり、斜度は緩い。左の沢には澄んだ沢水が流れている。この道の上流部には、滝があり、白い飛沫が流れ落ちている。入川と白泰沢との合流点がトロッコ道の終点になっている。ここからが本格的な山道歩きとなる。道は、しばらくは白泰沢右岸に沿って登る。霧雨が降っているが、広葉樹の樹林の下で雨具を着けるほどでもない。沢筋から斜度がきつい尾根に登る。風もなく、気温が低くなり、汗が出て寒く感じる。尾根に登って一休み。ブナなどの広葉樹林だが太い木々が多く、雲も厚くなり暗い。林床には下草、灌木もなく落葉が積もり、秋らしくキノコが何本か出ている。
この後は入川左岸を、高度をあまり上げずに山麓に沿いながら歩く。大きな木が無く日が射す場所にはアセビや草も生えている。崖も無く、木の根も出ておらず割合歩きやすい道である。歩くうちに雨が強くなって木々から大きな雨粒も落ちてくる。徐々に、沢の高さに近くなり、沢の音がして、ログハウスの柳避難小屋に着いた。ここで一休みし、沢装備を付ける。小屋には先客の釣人1名がおり、5日間ここで寝泊まりしてイワナ釣りをしているという。「15匹釣った、釣った魚はリリースする。」などと話していた。
いよいよ、沢登りだ。小屋の中で軽い食事をし、装備を付け出発した。少し歩いて、二つ目の吊橋の手前から、真の沢に入る。ここは股の沢と真の沢の合流点である。入川の渓流釣場の付近の水量と同じ位の水量である。小雨が降り続く中、澄んだ沢水の中を歩き、流れが深い場所では、岸を歩く。荒川源流部で、左右は急傾斜であるが、木々が鬱蒼と繁っている。沢には直径1、2mの大岩がゴロゴロとしている。沢水は、白い渦となって、ドードーと小滝のように流れ落ちている。この連続である。倒木もあり、跨ぐか、その下を潜って進む。「通らず」というゴルジュでは、通過できそうにないので、遡行図を参考に、左岸を巻いて通過した。その後も、高くはないが、滝が続く。渕では、黒い魚影が動く。沢は、滝、瀬、渕と様々な姿を見せている。武信白岩沢合流点にザックを置いて、50mほど上流に遡る。暗い中、白い流れを落としている千丈ノ滝に出会う。奥秩父最深部の2段高さ35mの立派な滝だ。滝そのものも見ごたえがあるが、左右の大岩壁も大迫力である。どういう地形変動でこの滝ができたのか。
一旦、下流に下り、右岸の斜面に取りつき、滝を巻くため先行の3人で登る。森の中の急斜面だ。距離にして、100mほど登って、後続の2名を待つ。数分待っていたが、登って来ないので、Mさんに後続者が見える場所まで、下ってもらう。呼んでみたりするも、反応がない。Mさんに確認してもらったら、川原付近にはいないという。3人で話合い、既に、滝を巻く道を上流に行ったのではないかという結論になった。付近の道をよく見ると滝を巻いているようなほぼ水平な踏み跡があった。この道を上流に向かう。100mほどで滝の上流に出て、対岸に幕営準備をしている2名を見つけた。このヒヤリハットは、私の判断ミスに原因があり、何点か反省点がある。後続者を待たないで、登り過ぎたこと。「林道」のイメージで、広い道があると誤解していたこと。滝を巻く場合、滝の高さ以上にあまり登らないことなどが理解不十分だったことである。今後に生かす教訓としたい。
テン場は左岸の苔むした割合平坦な場所で、倒木もあった。全員でタープを張り、着替えをし、夕食の準備をした。小雨も降るなか、焚火がうまく起こせず苦労する。それでも、どうにか、ご飯を炊き、お湯を沸かしてみそ汁を作り、持参した魚を焼き、夕食を食べて、体を温めることができた。小雨が降り続く中、タープの下で各自シュラフの中に入り、疲れた体を休めた。風が無いのが幸いだった。
24日<天気曇後晴れ>天気予報どおり、明るい空で夜が明けた。朝食をとり、タープなど宿泊の設営を片付け、沢装備をして7時には出発した。試しに釣りをして2匹を釣りあげた。その後は木賊沢合流点からは、右の真ノ沢に入る。木賊沢の方が本流のように見える。沢は急流になり、滝が続く。左岸を巻いたり、右岸を巻いたりする。滝の横が突破できそうな場所は、かなり高い大岩の間を、攀じ登る。白い岩盤が出てその上を流れるナメの滝も通過する。途中で珍しく、右岸に泊まっている人がいて焚火の煙が出ている。釣人か。三宝沢を右に見て進む。さすがに沢が狭く、水量も少なくなる。そして、倒木地帯になり、大量の倒木が沢の中にも、沢を横切るようにも倒れている。倒木の上は滑りやすいし、下を潜れば、ザックが引っかかる。汗をかきかき登る。沢なので、休憩の度ごとに、美味しい水が飲めるのはありがたい。そんな沢を詰めて登って行き、大岩壁の横を遡る。そしてやっと荒川源流の碑にたどり着くことができた。皆の協力で登れたと、固い握手をした。
ここで、沢装備を解き、一般登山装備にして、まず、甲武信小屋に登り、休憩をとる。ここからは関東平野を望むことができた。4人は、甲武信ヶ岳山頂に登頂した。帰ってきてから全員で、木賊山を経て、戸渡尾根を、下り続け、西沢山荘に着いた時には、日暮れて暗くなり、ヘッドランプを付けて車道を歩いた。駐車場まで、30分ほど、無事に着くことができた。1日目ほぼ8時間、2日目ほぼ10時間の厳しい沢登りが終わった。奥秩父最深部、ほとんど誰も入ることのできない真ノ沢沢登りの厳しさと魅力を味わうことができた。全員が登れたのは、リーダーの力、個々人の力、チームの協力の成果である。